表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
映画評論  作者: 未世遙輝
11/36

映画 永遠の0

【場面:深夜のカフェ・フロア。みんなで映画鑑賞会のあとのトーク】



◆千束(足をソファに投げ出しながらミルクを飲む)

「うわぁ〜。『永遠の0』、やっぱり何回見てもズドンと来るねー……。なんでかな、“死んだのに説教されてる気がする”映画って。珍しいよね、あれ。」


◆ひとり(目を伏せて手元のストローをいじりながら)

「う、うん……わたし……あの、“誰かが生きるために自分は死ねる”って言葉、ずっと頭の中に残ってて……。でも、でも……そんなの、できないよ、って思ってしまって……」


◆シュタルク(勢いよくコーヒーを飲み干して)

「いや、それ、普通だろ。俺もさ、“生きて帰れ”って言われても……逆にプレッシャーっていうかさ。……“俺なんかが生きてていいの?”みたいな気持ち、めっちゃ分かる。」


◆フェルン(少しだけ笑って、でも静かに)

「それでも宮部は、“生きて”って言った。あの時代に、“死ぬな”って言い続けた。……それって、制度をぶん殴るぐらいの勇気が要るわ。」


◆千束(軽い口調で)

「そうそう。特攻隊で“生き残ることを考えろ”とか、マジでアウトだもん。当時の軍人から見たら、“裏切り者”ってレベル。でも宮部は、“そう言わなきゃいけない理由”を、死ぬまで持ち続けた。……なんていうか、死んだことで“逃げた”んじゃなくて、“引き受けた”んだよね、ぜーんぶ。」


◆フリーレン(窓の外に目を向けたまま、ゆっくりと)

「彼の死は、美談じゃない。……あれは、“倫理の答え合わせ”だった。死ななくてもよかった。でも……死ななかったら、他の誰かが死ぬ。それを分かっていて、命の使い方を選んだ。……人間の時間軸の中で、それはすごく重いこと。」


◆ひとり(小声で)

「わたし、あの……“自己犠牲”って……なんか怖いです。だって、わたし、いつも“いなくなったほうが楽”とか考えちゃうから……。でも、宮部さんの死は、それと違うっていうか……ちゃんと、“誰かを生かすため”だったから……余計に、すごくて、怖い……」


◆フェルン(穏やかな声で)

「あなたの感じ方は、間違ってない。……あれは、“犠牲”じゃない。“責任”だったの。自分が生き残って、他の若い兵士が死んだ。それがずっと彼の中で重くなって……最終的に、自分が死を引き受けた。つまり、選んだの。」


◆シュタルク(小さくうなずいて)

「……だから、かっこいいって思うけど……やっぱ、苦しいよ。だってさ、戦争って、なんかさ、“誰かが正しいことをやるたびに、誰かが傷つく”って構造じゃん?」


◆千束(にこっと笑いながら)

「そうそう。“優しさ”が一番罪深い場所だよね、戦争って。だから宮部の死って、見終わったあとも、モヤモヤする。でもさ、そのモヤモヤが、たぶん“考えさせられてる”ってことなんだよね。」


◆フリーレン(少しだけ間をおいて)

「問いを残す死。……それは“人間らしさ”の証明。正しさじゃなくて、揺らぎや矛盾を引き受ける行為。宮部は、“制度の中で、人間であり続けた”最後の一人だったのかもしれない。」


◆フェルン(結論のように、静かに)

「死んでしまえば、もう声はない。だからこそ、“何を残すか”が重要になる。……宮部久蔵は、“誰かが生きている”という現実そのものを残した。それって、本当に強いことだと思う。」


◆ひとり(涙をぬぐいながら、でもほんの少し微笑んで)

「……うん。“どう死ぬか”って、“どう生きるか”とつながってるんですね……」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ