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定まる決意

 空中歩行は無理だが、多段ジャンプが可能と知り、瓜生も金塊を作り跳躍する。極端に高くまで行ったわけではないが、空中にいたのがよほど楽しかったのか、降りてきては跳んでを繰り返していた。その状況を眺めていた鐵月に対し、水面が話し掛ける。

「灰はしないの?」

「僕にはおそらく、あの二人みたいに高所へ跳び上がる場面はやって来ませんから。」

「単に怖いとかではなく?」

「ええ、高所恐怖症ではないので。」

「ふーん…。」

「疑うなら証明しましょうか?」

 直後、鐵月も跳び上がり、足元に鉄塊を作って何度も跳躍する。10m程の高さまで到達した後、再度少しずつ足元に鉄塊を作り、跳躍しながら降りてくる。

「なんだあ、高所恐怖症じゃないのか。残念。」

「なんで残念がるんですか。」

「だって灰の苦手なものが知れると思ったのに、平気なんでしょ?」

「僕の苦手なもの知ってどうするんですか?」

「別にどうもしないよ?ただ知りたいだけ。」

 鐵月には、苦手としているものがあまり無く、有っても人に話したりはしないため、水面は、鐵月に苦手が存在するのかどうか気になったとのこと。

 暫く跳んでいた二人が、空中から地上に戻ってくる。着地してすぐに木陰に座り、

「疲れたぁ~」と言い、休憩を取り始めた。そんなくたびれた様子の二人を放って、水面と鐵月は話す。

「じゃあ、灰が得意なのって何?」

「僕もわからないです。あまり自分の得意不得意に興味がないので。」

「もっと自分に興味持って生活しなよ…。」

「でも現状、困ったことはないので、僕はこのまま変えるつもりはありません。」

 水面は、鐵月を心配しているが、当の本人は全く気にも留めておらず、自身にも他人にも興味を示すつもりは無いらしい。

 瓜生と金剛は座り、鐵月と水面は話している傍に、公園の出入り口から一人の中年男性が近づいて来ていた。ただの通行人かと思い、四人は軽く会釈をしながら、

『こんにちはー』と挨拶をする。なんてことのない日常風景のようだが、突如水面が特異を行使し、男性を転倒させた。無色透明な水晶のため、真横にいた鐵月以外誰も、水面が特異を行使したことに気が付かなかった。

「何故、特異を使ったんですか⁉」

「この人、ポケットにナイフ忍ばせてるよ。」

『っ⁉』

 水面の発言に一同が困惑する。

「すごいですねお嬢さん。一体どうしてわかったんですか?」

「あなたのポケットから妙な金属音がするの。」

「これは驚いた。目が見えないとは聞いてましたが、まさかここまで聴力が発達しているとは。」

 どうやら男性は鐵月たちの情報を詳しく持っているようで、全員が警戒態勢に入る。

 男性は、右ポケットからナイフを取り出し、水面に向かってくる。鐵月は、その男性の足を払い、転倒させようと謀るも(かわ)され、水面の顔に刃が突き刺さろうとした瞬間、ナイフの刃が折れた。水面は、自身の顔の前に厚い水晶の盾を張っており、男性の攻撃を防いだ。

 即座に瓜生と金剛によって男性は捕らえられ、地面に倒れ伏し、背中に手をまわした。

「鐵月くん、水面ちゃん大丈夫?」

「うん、平気。」「はい、大丈夫です。」

 心配する瓜生に二人が同時に答える。

「何で水面を狙ったんだ!」

 男性の頭を右手で押さえつけながら、金剛が声を荒げて男性に詰め寄る。その問い掛けに対し男性は、悔しそうな声を上げつつ、顔は笑って答えた。

「あのお嬢さんが一番厄介になる。ここで消しておくのが最善策だと判断されたんだよ。」

 男性の返答に引っかかる点があり、鐵月は男性に尋ねる。

「判断された?という事は、あなたに実行を命じた誰かがいるんですか?」

「君か、汗鉄(かんてつ)の少年は。話は聴いてるよ。なんでも赤子の頃の記憶があるとか。」

「…。」

「君も厄介だから、早めに始末したかったんだけども…どうやら無理そうだね。」

 取り押さえられている状況に諦めがついているようだが、やけに落ち着いている。

一先(ひとま)ず、警察に通報する。」

 金剛が左手で携帯を取り出したその時。

「熱っ!」

 瓜生が男性の手を放してしまう。

 突如として、男性の手が発熱し、瓜生を振り解き、頭を押さえつけている金剛の右手首を掴みながら立ち上がる。

「アッツ!!!」

 金剛の手首が音もなく焼けていく中、鐵月が金剛の左手から携帯を取り、110番通報をし、水面に渡して右手に鉄を集める。

「繋がったら、お願いします。」

「え⁉あ、うん!任せて!」

 一瞬の困惑があったが、すぐに理解して携帯を耳にあて、待つ。

 鐵月が金剛の左手から携帯を取った直後、金剛は、空いた左手に粒上のダイヤを作り、自身の右手首を掴んでいる男性の左手を掴んで、ダイヤで男性の手の甲を削り始めた。

「っ!痛いなあ。」

 手の痛みよりも、攻撃された怒りの方が大きいのか、男性も声が荒くなる。しかし直後、男性の頭に鉄球がぶつかる。

「大丈夫ですか?」

 金剛に鐵月が近づき、声を掛ける。

「俺は大丈夫。火傷の痕が付いちまっただけだ。」

 鐵月が安堵の一息を吐く。だが、すぐに男性が起き上がり、頭を押さえながら、穏やかや顔で(いきどお)りを露わにする。

「鉄球は人に向かって投げる物じゃないでしょう?」

「元をたどれば、先にあなたが水面さんにナイフを向けたんですよ。」

「そうだったねえ。」

 起き上がってすぐに、男性は歩み寄ってきた。その近くで、鐵月の投げた鉄球が、男性の方へ転がって行き、足元で液体となり、薄い鉄板に形を変え、四つに分かれて、それぞれが男性の両足のつま先と(かかと)を地面に固定するように曲がる。

「なるほど、考えたね。でも、詰めが甘い。」

 そう言って靴を脱いだ男性が再び鐵月たちに近づこうとしたその時、地面から棘のような物が勢いよく突き出し、男性の足を貫いた。その直後には、棘の先端が地面と水平になり、抜けなくなってしまった。

「グアァッ!!…クゥ…。」

 相当痛いのか、今回は悶えてその場でしゃがみ込んだ。

「地面とも繋がっていますので、無理矢理抜くのはお勧めしません。」

 男性の背後で固定されていた靴を液体となった鉄で運び、手に取って男性に差し向ける。それを受取ろうとした男性の手は、また発熱しており、今度は鐵月の手首を掴もうとした。が、男性の手には、既に鉄製の手袋が付けられていた。

「素直に受け取ってくれたら、あなたも火傷せずに済んだのに…。」

 火傷に苦しむ男性を見下すように眺める鐵月に三人は、少しばかりの恐怖を抱いていた。

 そうして、警察が到着するまでの間、足には棘が、手には徐々に冷えていく高熱の手袋(鉄製)が取り付けられていた。

 警察に連行されていく男性の背中を見届けながら、四人は話す。

「あの人、鐵月くんが言ってた施設の関係者かな?」

「おそらくは。ただ、職員ではないかもしれないです。」

「どうゆうことだよ。」

「あの人は、僕らと同じ実験体だと思います。」

「実験体…ウチら、ほんと何でこんな体にされたんだろ。」

「ならさ、突き止めようぜ。俺らをこんな体にした理由。」

「もしかしたら私たち、元の体に戻れるかもしれないよね。」

「戻れなくても、ウチらみたいな人はこれ以上増やすべきじゃないって。」

「よし、なら今から俺らは、こんな体になっちまった理由を探るグループ。メタロックだ!」

「なにそれ?そのまんまじゃん。」

「でも張斗っぽいよね。」

「…。」

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