02.十字架なき世界
アスファルトの道を照りつける重金属の太陽。かつて、悪魔が作ったとされるそれは、天高く不気味に空に浮かんでいる。帝都ピースは快晴だ。
「まったく今日も暑いね~」ルーデンスは手をパタパタと振り自身に風を送る。
「……そうですね」アリスもこの暑さが結構来ているらしい、じりじりとした熱気に顔をゆがめている。
「これもアルカナエネルギーのせいなのかな~」
帝都ピースは数年前までは年中涼しい気候だった。しかし、昨今気温上昇が目立つようになった。一説によるとアルカナエネルギー使用における副作用だと言われているが、真偽は定かでない。恐らく暇を持て余した市民のゴシップだろう。ルーデンスはゴシップだと知ったうえでふざけたように話す。
「またしょうもないことばっかり言って、ちゃんと見回りしてください」
「まぁ暑い以外は楽だからいいか~」
「まったく……」アリスはため息をつく。
現在ルーデンスとアリスは、市街の見回りに来ている。ルーデンスたちが所属する帝都ピース管轄治安維持機関(通称:I.P.S.A. )の中央捜査部の主な仕事は、重大犯罪や複雑な事件を捜査することだ。
今回は最近世間を騒がせている事件の捜査を兼ねた見回りなのだが、めんどくさがり屋のルーデンスはやる気がなかった。
「そういえばルーデンス捜査官、今回の事件について教えていただけますか?私が配属されるより前に捜査会議をしているから、事件の概要はルーデンス捜査官に聞けって局長に言われいます。」
「あ~そういうことねぇ、事件の概要ねぇ~」ルーデンスはバツが悪そうにアリスから顔を背ける。
「確か、大型の獣?が人を襲うやつだったっけ?あの~そう!ジェヴォーダン地区のやつ!」
「もしかして……会議出てないんですか?」ぎろっとした目でアリスはルーデンスを睨みつける。
「さぁ!事件解決に向けて捜査&見回りだ~!」空元気で誤魔化す。
「信じられません!会議にすら出ないなんて!ほんとうに捜査官なんですか!」烈火のごとく口ばしる勢いにルーデンスは、この子湯沸かし器みたいだなと思った。
がみがみとアリスがルーデンスに説教するさなか、突然がなるような声が聞こえてきた。声はルーデンスたちのいる歩道から数メートル離れた噴水方向より聞こえてくる。
「……悪魔だ!我々は正義の……する!」ところどころ途切れて良く聞こえない。ルーデンスとアリスは何かの事件と思い走って声の方向に走った。