おねがい
この人のこういうところが、とても嫌い。
「ね、おねがい」
この人のこういうところが、とても好き。
「ね、おねがい」
あなたのその、困ったような、笑ったような、それでいてどこかあざといその表情がとても好きなの。
今日も今日とてそんな“おねがい”を繰り出してきた彼。
可愛いけど嫌だし、だけどそんなふうに甘えてくれることは嬉しくて結局大好きで、百面相をしながら了承した私を嬉しそうに抱きしめた彼はすやすやとお昼寝に突入していた。
前髪を撫でても、頬をつついても、全く起きる気配はない。
本当に、嫌になる。
……彼が?それとも彼に甘い自分が?わからないけれど。
いつだったか、「人は欠点をこそ愛するのだ」と、聞いたことがある。
だけどきっと、長所も欠点も、おんなじ。コインの裏と表。
ねぇ、こんなに好きにさせて、どうするつもり?
結局いつだって私は、あなたという海に飲み込まれている気がするんだ。
なすすべもなくゆらゆら漂って、どうしようもなくて、とても幸せ。