第3話 だれ?
過去を懐かしんで笑った。そのとき。私に、“あの日”の幻覚が見えた。
「……っ……っ…………っ!」
足が、震える。
っ無理!
思わず、今出てきたばかりの部屋へ戻る。
ベッドの上で丸くなる。
「…っ…………っ……っ! ……………っ…!」
怖い、怖い、怖い!!
『……! 花梨!?』
…お兄、さん??
「なん、で……今は、話せ、ないん、じゃ…っ」
先程、しばらくは話せないかもしれないと言われたばかりだった。
『……いいから話すな!! っ〜〜、あーもう!!』
ドタドタ、と、音が聞こえます。
【ゴミはそこで大人しくしていろ!!】
“あの日”のお父さんの言葉。
「………っ………!!」
“あの日”のことを思い出す。
怖い、怖い、助けて、助け……
――ガチャッ
「花梨!」
……お兄さんの、声?
タブレットから、では、ないです、よね……
「っ!?」
誰かが、背中をさすってくれていた。
あった、かい……?
「…………っ、ふぅ〜っ………ふぅ〜っ……。」
その暖かさで、動悸がだんだんと落ち着いてきた。
「大丈夫か?」
「だ、れ……? ……おに、いさん……?」
「ん……? っと、そうか。マスクで隠してるから……
ああ。そうだよ。俺が“お兄さん”だ。」
疑問を肯定する、茶髪の人。
……お兄さん、なんだよね。
口元はマスクで隠してるから見えないけど、かなりのイケメンだと思う。
なんで隠してるんだろう。
………………いくら考えてみてもわからないな…。
「ねぇ、なんで、マスク?」
「…………元気になってからの最初の一言がそれか……。
………俺は“お兄さん”でもあるけど、“誘拐犯”でもあるらしいからね。」
呆れつつ答えてくれました。
そうでした。お兄さんは私のことを保護…もとい誘拐をしたんでした。……完全に私のわがままですけども。
ほんとうに、おにいさんは、やさしいなぁ……
「おにい、さん。ありがとうございます……」
不定期ですみません……!!