第二話 誘拐犯さん→お兄さん 〜誘拐犯目線〜
短めの誘拐犯さん目線です。
「………」
あの日。あの子、花梨と出会った日。
俺――誘拐犯は、驚いた。
まるで、過去の俺の様に、河原で倒れているあの子を見かけて、見捨てられなくて。怪我の手当てをして、話を聞いて、また驚いて。
こんなに、俺と、「ボク」と、似ている境遇の子が、いたなんて。
思いも、しなかったんだ。
話をした時。花梨は、こう言った。聞こえないほど、小さな声で。
「……もう、やだ。助けて、よ……」
その言葉が、あまりにも、あの頃の「ボク」の言葉に似ていて。
どうしてか、勝手に体が動いていた。
家に連れて帰ってくれた時、あの人は、すぐに連絡してたから、そうしようと思った。
「……これから、よろしくおねがいします。
………“誘拐犯”さん。」
―――誘拐犯。
ああ、確かにこれは誘拐かもしれない。
そう、思ったら、連絡するのが怖くなった。でも、この子を見捨てるわけにもいかなかった。
ああ、俺は、これからどうしたらいいんだろう。
やっとしりとりから解放された俺は、ふぅ…とため息をつく。
「それにしても、お兄さん、か。」
ははっ、と、声が漏れる。
ほんとにそっくりだな、「ボク」もあの子も。