2-優斗 それはまぎれもなく彼女で
アイドル?
かと思ったが違った。白いワンピースは、この朝日に照らされて輝いて見え、真っ白なスニーカーはとても可愛らしい。
徐々に彼女が近づいて来るにつれて、化粧をしてきているのが目についた。学校では化粧が禁止されている。田舎特有の厳しい規則のせいか。まぁ、教師に気付かれないように薄く化粧してきている女子生徒もいるけど。
相田さんは、学校ではいつも「すっぴん」、というより「化粧はしてきてない」と言った方がいいだろうか。
でも、今日は学校ではない。相田さんの化粧は、濃いギャル系メイクではなく、うっすらと、相田さん特有の清楚な雰囲気を保っている。
口紅を塗っているのだろうか、いつもよりちょっと色っぽい唇と、アイラインによってキリッとした瞳。
なんで男子の俺がこんなにメイクに詳しいのかは詮索しないで欲しい所だが。
それだけ、彼女はキレイだった。ただ、忘れないで欲しいのは、彼女はもともと超美人で可愛いのだ。
マドンナと言われている訳ではないが、そもそもうちの高校は顔面偏差値が異常に高い。割合的に見たら、美男美女の方が多いくらいだ。
だからなのか、マドンナなんてそもそもいない。誰が一番かなんて、選びきれないほど美女が多いからだ。
相田さんもその一人でもあるが、そんな彼女が化粧をしている姿を見るのは初めてだった。
まぁ、こんな陰キャな俺が相田さんみたいな女子のプライベート姿なんて、見たことがないのは当然だけど。
でも、この姿を見た事がある男子がいると思うと、羨ましいような、悔しいような・・・
そんな考えをしているうちにも、彼女はどんどん近づいて来る。
不意に恥ずかしくなって、なんとなくスマホに目を落とし、彼女に気付いていないフリをした。
目線はさっき通知を切ったばかりのツウィスターを見ているが、意識は完全に彼女に奪われていて、視線からの情報を全て遮断する。
意味がないのに、ツウィスターの画面を下にスクロールしては、“シュパッ” “シュパッ” という更新される音だけが聞こえる。
そして、次に耳に入ってきた音は、
「優斗君ですか・・・?」
という、戸惑いと緊張の入り混じった、少し震えた、可愛らしい声だった。
【声をかけられた時の優斗君】
(急な名前呼びは心臓に悪いです。。。)