0-美月 “7日間同棲してもらいます。”
“ 7日間、2人には同棲していただきます。”
(んんん…?同棲?なにそれ。)
今この生徒会室には、私と、ゆうと君と、生徒会委員のつばさ君の3人。そしてこの問題発言をしたのは、つばさ君だ。つまり “2人” とは私と優斗君のことだ。
「同棲ってなんですか?」
気づけばそう質問していた。
“この2人は生徒会文化祭企画の「7日間共同生活」のくじ引きにて当選しました!”
そう言ってなんか1人で拍手しながら盛り上がっているつばさ君。
だけど私は、このつばさ君の一言で全てを理解してしまった。
「7日間の共同生活」
これは毎年この学校の文化祭で行われる大人気企画。同学年全員の中からくじ引きでランダムに2人が選ばれる。ちなみに必ずしも、男女というわけではない。男と男、女と女の場合もあるのだ。そして、選ばれた2人は7日間共同生活を送ってもらい、その上その様子を自分達で撮影しなければならないのだ。
―つまりWeTuberみたいな事をしなければならないのだ。
それに加えて、この企画に当選すれば、基本的に生徒側に拒否権は無い。もちろん、未成年同士が7日間も同棲するのだから、お互いの保護者の同意は必要になる。ただ、逆を言えば、保護者さえ良ければ半強制的に同棲は決定するのだ。
まさか選ばれるなんて・・・
一瞬にして、私の頭は色々な思考を巡らせた。
(この企画自体、すごく好きで毎年楽しみにしていたけど…)
(まさか体験する側になるなんて….)
(相手はあの優斗君…?)
(いい人だけど、俗に言う陰キャと同棲…?)
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優斗君はいい人だ。優しくて紳士な人。女子同士で話していても、そこらへんの陽キャでちょっとイキっているような奴より全然モテていると思う。私も別に嫌いではない。
ただ本当に喋らない人なのだ。正直どんな声だったか本気で思い出せない。だからどんな性格なのかもあまりわからない。いや、こういう根暗な性格なんだろう。
でも彼は本当に優しくて、いや、優しすぎるくらいで。
みんなが面倒くさがる掃除を手伝ってくれたり、いつのまにか黒板を消していたり、なにかあれば、必ず相手を先に譲って後ろに下がる謙虚さだったり。実際、こちらから話かければ応えてくれる上に、むしろアドバイスとか、気の利いた事を話してくれる。そんな頼りがいのある人なのだ。
だからなのか、密かに女子からは人気がなくもなかった。ガチ恋してる人こそ少なかったが、「将来、あんな感じの旦那さんも悪くないかも〜笑笑」なんて冗談混じりに話す人もいるくらいだった。
それでも、彼は「陰キャ」。話かける人はそう多くなく、私もそのうちの1人だ。
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こんな事を考えるうちに、次第に不安な感情が湧いて出てきた。企画に参加できるのは嬉しいんだけれども…
私の心は 不安:期待 が 7:3 の状態になった。
そんな時、こんな声が私の耳に入ってきたのだった。
「僕はOKですよ。」