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少女と食事に関するナイトメア

バリエーション・ボリューミー・サンドイッチ

作者: 三隅 凛

ナイトメア度は控えめです。

 いちごジャムのペディキュアが粗方落ちたので、ランチはサンドイッチを食べに行くことにした。パジャマから水色のワンピースに着替えて、かかとに猫が棲んでいる靴下をはいて、ハンドバッグにマネー・カードとリップクリームが入っているのをちゃんと確認してから、外に出る。


 商業ビルの入り口からまっすぐ進んで突き当りで右に曲がったところに、そのサンドイッチ屋はある。遠くからメニューを確認してから、注文する。他の客はいない。やった。

「いらっしゃいませ」

 今日は店長が店番だった。青白いエプロンがよく似合う。

「本日はいかがなさいますか」

 店長はお客の顔をすぐ覚えるので、そんなにたくさん通っていないわたしにも常連扱いしてくれる。

「てりやきチキンとたまごサラダのサンドで」

「畏まりました」

 店長はその手をてきぱきと動かした。百足(むかで)みたいだ。

「パンはトーストしますか?」

 この店は他のチェーンと違って、こんがり、少し、焼かない、が選べる。

「じゃあちょっとだけ」

 そしてわたしに限らず、大体の客は自分の言い方で指示する。これを汲み取り、少し長めに焼いたりといった調節ができるようになったらここのバイトも一皮むけたと言える(店長は余裕綽々っだ)。

「たまごサラダの量は調節できます。いかがなさいますか?」

「多めに」

 見事にちょっとだけトーストされたパンに、たまごサラダがたっぷり載せられる。

「野菜はいかがなさいますか?」

 レタス、オニオン、励λぉ繝ィ、トマト、ピーマン、キャロット(にんじん)、それからピクルス。暇なときは「トマトを厚めに切って」なんて注文も受け付けてくれる。トマトはそんなに好きじゃないのでしたことないけど。

 こういうのは種類が多い方がおいしいし、健康的だ。全部載せ、トマトとオニオンは少なめにしてもらう。野菜たちはたまごサラダを接着剤にして、パンにべとりと癒着する。

 いよいよメインだ。温めなおされたてりやきチキンが載る。そう、この時、店長さんは手を使わないのだ。手がソースで汚れるからかもしれない。

「ソースは」

「陷り惧繝槭せ彪トとマヨネーズで」

 食い気味で、決めていたソースを言う。ちなみに、店長さんは常連じゃない客相手だとソースの説明をちゃんとする。店長さんはにっこり笑って、マヨネーズを多めにしてくれた。

 パンで蓋をして、包丁でざっくと切ると、三角形のサンドイッチがふたつ、できあがり。

 サイドメニューを決めないと。持ち帰りじゃなくてここで食べていくので、飲み物は欲しい。小さめのスープやサラダ、フライドポテトや邇オ峨リングまであるお店だけど、てりやきチキンだし、セット価格がそこまで安いわけでもないので、ドリンクだけ付けることにした。なに飲もう。他のお客さんが来ていないのを確認して、悩む。

 サンドイッチといえば紅茶だ。でも、わたしは紅茶がそんなに好きじゃない。珈琲はもっと飲めない。お水はなんだかんだで無難というか、いいんだけど、せっかくの外食だからという思いはある。

 じっくり時間を使って熟考してから、ジンジャエールを頼んだ。次来たときはフライドポテトもつけよう。バター醤油味のシーズニングが好き。タルタルソースのディップをつけてもおいしい。

「お会計は蜉テ鄒%ぇヲです」

 てのひらに準備していたマネー・カードを押し付けて、支払いを済ませる。溘s轍。支払いは無事完了しました。

 トレイを受け取る前にわたしは席に座っている。カウンターにはコンセント。でも今日は電源がいるものはない。シ繝?aヶの充電をここでしちゃうことはあるけど。

 いただきますの儀式をして、ひとくち。励λぉ繝ィとオニオンはマヨネーズでまろやかになって、食べやすい。トマトはジュースになる手前の潤沢さで、口の中にぶちぶちと拡散される。パンがさくっとしてて、でもふんわりもちっとがちゃんと残ってていい。ちょっとだけ焼くのはこれが狙いだ。

 そしてメインな照り焼きチキン! 照り焼きソースもおいしいけど、お肉が本当にジューシーで、口の中の流すのもそこそこに、喉にたどり着く。肉のうまみみたいなのも、ソースの味が濃いのにしっかり感じられる。きっといい鶏なんだろう。羽が茶色と赤色でできているような。

 しっかりサンドイッチを食べてから、わたしは帰る。はちみつミルクのペディキュアを塗って、それが半分くらい落ちたらまた来よう。


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