ケース1 死角の多いテレビ局1
息子の死から3年後。
神野 蓮という名を持つ俺は、警視庁特務部ESP捜査室一課のリーダーであり、ESP捜査官として、日々事件に挑んでいる。
ESP捜査官は、超能力であるESPというものを駆使して、事件を解決している。
そもそもESP(Extra Sensory Perceptionの略語)とは、日本語で超感覚的知覚という意味になっており、予知や人の気配、そこに何かがあるといった常識では考えられない説明できない超能力のことである。
ドラマや映画などでよく耳にする刑事の勘というやつだ。
俺たちは、ESPで犯人の居場所を突き止めたり、誘拐された人の居場所を見つけ出したり、ESP持ちではない警察官が見つけられない事件の重要な手掛かりや証拠を見つける、または恐ろしい事件が起きると予知して未然に防ぐ等々、人間離れした力で事件を解決しているのだ。
現在、ESP捜査室に事件捜査の依頼が来ていない。理由は、ESP持ちではない警察官でも解決できる事件ばかりだからだ。証拠や犯人の顔などが分かっていれば、誰でも犯人も捕まえられる。
しかし、ESP捜査官が介入する事件は、普通の警察官がお手上げの事件ばかりで、証拠も犯人の顔も何一つ手掛かりが得られない事件、つまり完全犯罪みたいな事件は、ESP捜査官の手で事件を解決しているのだ。
そのため、そこまで忙しくない、というか暇でもある。
そんな時が来ると俺は、息子の死の真相を探っている。あれから3年経っているが、未だに犯人は捕まっていない。手掛かりもなく、ESP捜査官が捜査しても何一つ、手掛かりが見つからない。
それでも俺は、いや俺たち夫婦は諦めていない。必ず犯人を捕まえてみせる。
そう意気込んで調べていると、俺の机にコーヒーが置かれた。
「蓮さん、コーヒー淹れときましたよ。」
「お、ありがとう。」
この男は、相道 秀樹といって、大学時代の後輩だ。歳は51歳。律儀な男で、自称「蓮の右腕的存在」と言っている。俺は右腕とかどうでもいいと感じているが、秀樹の能力は結構凄くて、予知で事件を未然に防いできた実力者だ。俺の信頼できる男だ。
「今日は事件の依頼、きてないですね。」
「確かにな。ESP捜査官の力がなくても、解決できる事件ばっかりなんだろう。」
「ある意味、平和ですね。ある意味。」
そうだなと返していると、同じ一課の男4人が部屋に入ってきた。
「お疲れ様です。リーダーに相道さん。」
今挨拶をしたこいつは、富久田 賢一郎、歳は45歳。頭はアレだが、合気道の有段者であるため近接戦闘ではピカイチで、俺も何度か助けられている。
「お疲れさん。」
俺はそう返すと、秀樹は富久田たちにコーヒー飲むかと聞くと元気よく、飲みます!入れてください!と言った。本当に元気だ。ある意味よろしい。
「僕は結構です。」
なんだか冷たい言い方をしたこの男は、八重野 拓、歳は39歳。日本最高峰の大学を卒業した頭の良い男で、一見冷たい態度を取っているが、根は優しく、事件に関わった人を人一倍気遣うことが出来る奴だ。頭が良いという事で、分からないことはよく八重野に聞いている。
「なんだ、いらないのか?」
コーヒー美味しいぞと俺はコーヒーが入ったコップを持ち上げると、今は飲む気分ではありませんのでと、返されてしまった。少し寂しく感じていると。
「相変わらず冷たい男だな!八重野は!さすが氷の男!」
富久田が明らかに誉め言葉ではない事を言っていると、それを咎める声が聞こえた。
「富久田さん、それ貶してますよ。怒られますよ。」
富久田に声をかけたこの男は、中江 時雄、歳は33歳。こいつは困った人を放っておけないお人好しで、この前、道に迷ったお年寄りに道案内したり、コンタクトを落とした高校生のために一緒に探したりして、遅刻をしてきた奴だ。いい奴だが、遅刻はやめてほしい。マジで。
「八重野さん、めっちゃ睨んでますよ。」
中江がそう言うと、富久田は「そう言わないと、周りの奴が勘違いするぞ。」と言って、八重野に向かって、ニコっとして笑った。
八重野がイラッときている時に、若い声をした男が話しかけてきた。
「皆さん、相道さんがコーヒー淹れてくれましたよ。」
秀樹と一緒にコーヒーが入ったコップを持って来てくれたこの男は、三木 宗吾、歳は24歳。つい最近この警視庁特務部ESP捜査室一課に配属されたルーキーで、ESPの使い方はまだまだ未熟だが、正義感が強く、刑事ドラマの影響で刑事になったという夢溢れる男だ。はっきりとものを言う性格なので、良くも悪くも、その言動でたまに困らされている。
「ありがとう。」
「サンキュー。三木、お前も思わないか?」
富久田に八重野の冷たい態度について聞かれた三木は、はっきりとこう言った。
「そういう所も八重野さんの良い所だと思いますよ。冷たい態度は、女性の心を掴むこともあるってテレビで言ってましたし、人によってはウケると思いますよ。」
これは褒めているのか、それともバカにしているのか、よく分からない。他の連中も、どっちなのかよく分かっていないようだ。
八重野は溜め息をついて、ほっといてくださいと言って、自分の机に向かった。他の連中も自分の席に向かっていった。三木もアレっとした表情をしたまま、席に着いた。
ESP捜査室一課はいつもこんな感じだ。他愛のない会話をして、事件が起これば、当たり前だが連携もとることも出来る。俺は、こんなにも頼もしい仲間はいないと思っている。
一課とは別に、ESP捜査室二課が存在していて、この二課の連中とも仲が良い。一課と二課で事件の捜査を行う事がほとんどだ。そのため、よく一課の部屋に二課の連中がやって来ては、他愛のない会話をしている。
二課には、俺の妻 神野 美夜子が在籍している。美夜子も俺と一緒に息子の死の真相を追っている。何か手掛かりがあれば、互いの情報を伝えあう、ベストパートナー。俺の惚れた女だ。
そろそろ、美夜子を含んだ二課の連中が来る頃だ。
一課の奴らと喋っていると、失礼しますとドアの向こうから聞こえてきた。
美夜子たちがやって来た。どうぞと声をかけると、ドアを開けて入ってきた。けれど、会話をしに来たような雰囲気ではないことが感じ取れた。こいつらの顔を見れば、何を伝えようとしているのか分かる。
そう、事件が起きたという顔だった。
「事件の依頼が来たんですね?」
秀樹が話すと、美夜子たちは「えぇ」と頷いた。
「都内のテレビ局で殺人事件が起きたわ。」
美夜子のその言葉で俺たちは、現場に向かう準備をする。現場はテレビ局。人が多い所で、人の出入りも凄い。もたもたしていては、犯人も捕まえる事も出来ない。犯人の思い通りにそうさせないために、警察がいるのだ。
必ず犯人も、事件の真相を明らかにしてみせる。
俺たちは、ESP捜査官。警察の最終兵器といってもいい。
ESP捜査官の名に恥じぬように、俺たちは現場に向かった。
この物語はフィクションです。




