表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落伍者とお姫様 ~異世界の冒険~  作者: 鯉々
第2章:芸術家の街
9/65

第9話:シップジャーニーの長

 宿に戻ったアタシ達は部屋へと戻り、休息をとる事にした。

 正直、今日は疲れた。お偉方に頭下げて、チンピラ相手に暴れて、頭も体もくたくたになってやがる。

 ベッドに寝転がってるアタシにオーレリアが声を掛けてくる。

「キセガワ様。少し宜しいでしょうか?」

「あ? どした?」

「次に向かう場所についてなのですが……」

 アタシは起き上がるのも面倒くさく、寝転がったまま話を聞く事にした。

「次はシップジャーニーの民の下へ向こうと考えています」

「シップジャーニーィ? 何だよそりゃ」

「はい。シップジャーニーは海の上で暮らす人々によって結成された組織です。いえ、最早一つの村と言ってもいいでしょう」

 海の上で暮らしてるか……確か、アタシが居た世界でもそんな感じの人間がいた気がする。

 しかし、海の上で暮らしてるんだとしたら、どうやって接触するんだ? あの小船じゃきついぜ。

「なるほどなァ。でもよ。海の上に居るんだろ? あの小船じゃ流石のアタシもきついぜ?」

「そこは問題ありません。明日、シップジャーニーの方々がこの街の港に来るようなのです」

「何しに?」

 すると、レーメイがアタシの問いに答える様に話し始めた。

「シップジャーニーの方々は交易や漁をして生活をしてるんです。明日は丁度このグリンヒルズに来るらしいんですよ」

「よく知ってンな」

「実は、昔お母様から教えてもらった事があって……それで思い出したんです」

 だとしても、妙に記憶力がいいな。普通日付までは中々覚えてねェよ。

「それを聞きまして、私がお教えしたのです」

 何だよオーレリアが教えたのかよ。レーメイの奴、まるで自分で全部思い出したみたいな感じで言ってたな。

「もう! オーレリア! 言わないでよ!」

「私は事実を申し上げただけです」

 あぁ……またガキが機嫌悪くしやがった……オーレリアも少しは気を遣えよ……。

 アタシは窓がある方へ寝返りを打つ。

「アタシはもう寝るからな。うるさくするんなら他所でやってくれ」

「あっ……すみません」

「お休みなさいませ、キセガワ様」

 意外と早く静かになったレーメイに驚きつつも、アタシはゆっくりと意識を落としていった。





 アタシは小鳥のさえずりで目を覚ました。もう朝か……。

 アタシはまだ寝ぼけている体を無理やり起こし、軽くストレッチをする。こうやって体を解さないと、長い事体がだるいのが続くからな……あればっかりはどうにも慣れん……。

「おはようございます」

「うわっ!?」

 アタシは突然掛けられた声に驚き、みっともない声を上げてしまう。ちくしょう脅かしやがって……起きた時にすぐ言えよ……。

「大丈夫でございますか?」

「……ああ大丈夫だよ。お前ェ、朝早いな……」

「いえ、私は昨晩から起きておりました」

 またかよこいつは……何でちゃんと寝ねェンだよ……。

「オイ。アタシ前にも言わなかったか? ちゃんと夜は寝ろって」

「はい。仰っていました」

「じゃあ何で寝ねェ!」

 思わず声を荒らげてしまう。

「以前にも申した通り、必要としないからです」

 意味が分からねェ……キリンでも少しは寝るぞ? 全く寝ないっていうのはおかしすぎる。

「お前ェ、何かの病気なんじゃねェのか?」

「いえ。私の体に現在不調は見つかっておりません」

「体の中で起きてたら分かんねェだろ」

「いいえ。分かります。その上で、不調はありません」

 クソ……不気味な奴だな……こいつにとっては自分の体で分からねェ事は無いって事か?

「……分かったよ。これじゃ埒が明かねェ……」

「ご理解頂けて何よりです」

 アタシは頭を掻きながら、レーメイに近寄る。

「オイ起きろ。朝だぞ。オイ」

 アタシが声を掛けてもレーメイはぐっすり眠っており、一向に目を覚ましそうにない。

 おまけにとんでもない間抜け面だ。何笑ってやがる……どんだけ楽しい夢見てんだよ……。

 アタシはレーメイの頬を摘まみ、引っ張りながら声を出した。

「オイガキ! 起きろ! もう朝だっての!!」

「………………んえ?」

 ようやく起きやがった。世話の掛かる奴だ。

 目を覚まし、体を起こしたレーメイはぼうっとした表情でしばらくベッドの上で座っていた。

 少し経つとはっきりと意識が覚醒した様で、慌て始めた。

「ご、ごめんなさい! ねね、寝ぼけてしまって!」

「落ち着けよ。それよりも準備しろ。漁で捕った魚とかは朝早くに売られるんだろ?」

「しょ、少々お待ちを!!」

 レーメイはどたばたと音を立てながら準備を始めた。まったく、朝からうるせェ奴だ。




「お、お待たせしました!」

 準備を終えたレーメイは息が切れており、髪もボサボサの酷い有様だった。

 そんなレーメイの元にオーレリアが櫛を取り出しながら近寄る。

「お嬢様お待ち下さい。髪が跳ねております」

「大丈夫よ! 間に合わない方が困るわ!」

 中々気が利くじゃねェか。女ってのは化粧やら何やらで異常に時間掛けるからな。あれはいまいち理解が出来ん。まァ、アタシが興味が無いからなのかもしれんが。

「オイオーレリア。後にしろ。先にシップジャーニーの奴らに会った方がいいだろ」

「……そうですね。分かりました。そちらを優先しましょう」

 オーレリアは櫛を収め、こちらへ歩き始めた。

 こういう時、こいつは合理的に動いてくれるから助かる。普段は融通の利かない奴でメンドクサイが。

「おし、そんじゃ行くぞ」

 その後アタシ達は宿のチェックアウトをし、港へと向かった。

 


 港にはいくつもの船が並んでおり、全部でどれだけあるのか、判断出来なかった。

 しかし、この大量に並んでる船は皆木で出来てるな。あっちの方にある船は鉄で出来てる様だが、文化の違いか? それにやけにデカイ船もあるな。

 アタシが船を眺めていると、オーレリアが一人でに歩いていった。

「オイガキ! 勝手に行くな! 迷子になるぞ!」

「キセガワさん! 行きましょう!」

 アタシとレーメイは急いでオーレリアの後を追った。あいつ……何考えてやがる。


 人ごみを掻き分けながら進んでいくと、オーレリアが誰かと話しているのが見えた。

「オイガキ!」

「キセガワ様。ご紹介いたします。こちら、シップジャーニーの民達の長。ヴィアベル・マールシュトロームさんです」

 オーレリアの隣にいた人物を見ると、その人物はニヤリと笑った。

 見た感じ、70歳はいってるであろう老女だ。しかし、その目は活気に溢れ、顔に刻まれた皺は数々の修羅場を潜って出来た傷跡の様にも見えた。

「アンタがキセガワかい?」

 アタシは一応礼儀正しく振舞う事にした。

「はい。喜瀬川雅でございます」

「ハッ、別に畏まらなくていいよ。それはアンタの素じゃないんだろう?」

 ……お見通しって訳か。

「……そうだな。素じゃねェよ」

 ヴィアベルは笑う。

「なるほどねぇ! アンタ、昔のあたしと同じ目をしてるよ。血気盛んな目だ」

「そりゃ光栄だな。そうやって年取っても元気でいたいもんだ」

 正直、自分の事を見透かされた様で、少しむかついた。

 ヴィベルの目線がアタシの後ろにいるレーメイに向く。

「そっちのお嬢ちゃんはレーメイ・トワイライトだろう?」

「えっ!? ご存知なのですか?」

「フッ、そりゃあ知ってるさ。アンタの父親がまだガキだった頃に会った事があるんだよ」

 まァ、この婆さんの年齢的に考えてもおかしくはないな。

 ヴィアベルはこちらに視線を戻し、アタシに話を振る。

「それで、あたしに何の用だい?」

「あーっと…………あー、オーレリア」

 アタシから振られたオーレリアは嫌な顔一つせず、代わりに話し始めた。

「トワイライト王国に太陽を模した魔術道具があるのをご存知ですか?」

「ああ知ってるよ。あれがあるから、あの王国は栄えた」

「はい。実はその内の一つ、『黎明』が盗まれたのです」

 ヴィアベルはニヤリと笑う。

「なぁるほど? つまりは、あたしらに探すのを手伝えと。こういう事かい?」

「無理にとは言いません。可能な範囲で良いのです」

 ヴィアベルは顎の辺りを触ると、数秒後、返事を返した。

「フッ、いいだろう。中々に面白そうじゃないか」

 助けてくれるって事か。しかし、そんな簡単に決めていいのか?

「オイちょっと待て。あんたらシップジャーニーの人間は集団で暮らしてんだろ? あんただけの権利で決めていいのか?」

「勿論ずっと手伝う訳じゃないよ。あたしらは色んな所に行くからねぇ。その時についでに探してやるって事さ」

 なるほどな。それなら納得がいく。

「ありがとうございます」

 オーレリアが深々と頭を下げ、去ろうとした時、突然ヴィアベルに呼び止められた。

「待ちな。どうせあんたらマトモな移動手段持ってないんだろ? 折角だから乗っていきな」

「そ、そんな悪いですよ!」

「心配しなくてもいいよ。明いてる部屋はいくらでもある」

 アタシとしてはメンドクサイ移動を任せられるという点で、この誘いは魅力的だった。とはいえ、アタシはあくまで付き添いだ。判断はレーメイ達に任せよう。

 そんな事を考えていると、オーレリアがレーメイに近寄る。

「お嬢様。私の計算ですと、シップジャーニーの方々に付いていくのが効率的だと思います」

「で、でも……」

「ほら、そっちの坊ちゃんもそう言ってることだし、乗りな乗りな!」

 ヴィアベルはレーメイをがっしりと小脇に抱え、そのまま船の方へと連れて行った。

 中々面白い性格してるじゃねェか。

「へっ、面白い奴だな」

「そうですね。キセガワ様に少し似ておられます」

 ……そうかァ? そんなに似てるか……?

 アタシはオーレリアを連れ、ヴィアベルの後に付いていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ