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落伍者とお姫様 ~異世界の冒険~  作者: 鯉々
第5章:レナス城塞攻略戦
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第25話:決壊

 アタシの怒声を合図として戦いが幕を開けた。

 アタシはその場で一回転し、右手に持っているロープで一薙ぎした。

 兵士達はロープに当たらない様にするため、少し後退った。

 アタシはそのまま奪っていたボウガンを近くにいた兵士の足目掛けて発射する。

 今まで使った事は無かったが、そこまで難しい動作は必要無かった。ただ標準を合わせ、引き金を引くだけ、ただのそれだけだ。こんな簡単な事で人を殺せてしまう。

 発射された矢は狙い通りに兵士の足に当たった。

 これで少なくとも一人は無力化出来た筈だ。足をやられて、それでも戦おうとする者はそうはいない。普通は足に矢が刺されば戦意喪失する。

 実際その兵士は足を押さえながら倒れこんだ。

 見たところ、後5人は居る。もうボウガンを使う事は出来そうも無い。新しい矢を装填する暇など無い。

 足元で木が軋む音が聞こえる。どうやら作業は順調な様だ。

「オラどうした!? かかって来いよ!」

 アタシは木の音を掻き消す様に声を響かせる。少しでも時間を稼がなくてはいけない。そのためにはここでなるべく派手に暴れる必要がある。

 しかし、アタシを女だと舐めていたのか、兵士達はすっかりこちらを警戒し、距離をとっている。

 仕方が無い……このままだと気付かれる可能性が高い。こっちから行こう。

 アタシはロープを右腕に巻きつけ、ボウガンを目の前の兵士に放り投げた。

 目の前の兵士は突然の事に怯み、隙が出来た。

 アタシはそのまま踏み込み、ロープを巻きつけた右腕で相手の顎に掌底を打ち込んだ。いくら兜で守っていようとも、衝撃までは逃がせない筈だ。

 実際見事に入ったらしく、そのまま崩れる様に倒れこんだ。

 周りの兵士達も流石にこのままではマズイと思ったのか、ついに攻撃を仕掛けてきた。

 横目で陸地を見ると、レーメイとオーレリアが走ってくるのが見えた。恐らく加勢するつもりなのだろうが、多分必要無いだろう。アタシ一人で十分そうだ。

 体を少し後ろに傾け、振り下ろされた剣を避ける。あまりにも、シンプルすぎる攻撃だ。こいつら本当に訓練とかしてるのか?

 アタシはそのまま剣に足を掛け、足元に押さえつけた。

 どうやらアタシの足ごと振り上げる様な力は無いらしい。まァ無理も無い。アタシだってこんな剣と人間一人分の体重を持ち上げろと言われたら無理だ。

「どうしたよ。訓練が足りないんじゃねェか?」

「何なんだお前……何が目的だ……」

「そうだなァ……テメェらのとこのトップをぶちのめすのが目的っつったら、どうする?」

 兵士達の間に緊張が走るのが分かる。そりゃあそうだろう。自分の所のトップが狙われてるとあっちゃあ大事だ。

 足元の剣に力が入るのが伝わる。

「何故だ……国を乗っ取る気か……?」

「そんなんじゃねェよ。アタシはそんなタマじゃねェ。ただ気に入らねェからぶちのめす。そんだけだ」

 あいつはテメェの目的のためだけに川を塞き止め、多くの人間を苦しめた。死ねばいいとは思わないが、それ相応の報いは受けるべきだ。

 足元から木が剥がれる様な音が聞こえる。兵士達も音に気付いたらしく、一斉に下を見る。

 どうやらそろそろ見たいだな。川の上流から火船が向かってきているのが見える。

 アタシは剣を蹴り飛ばし、後ろに少し飛び退いた。

「一応警告するぜ? ここから離れた方がいい。死にたくないんならな」

「何を言ってる!? 何の音だ!?」

「さぁな。まァ忠告はしたからな? あばよ」

 アタシはそのまま走って城塞の外側へと向かった。

 途中、こちらに向かっていたレーメイと目が合ったため、手で引き返す様に指示を出す。

 しかし、どうにも上手く伝わらなかった様であり、こちらを見てポアッとしている。

 後ろからは兵士達の騒ぐ声が聞こえる。どうやら、退避を始めたらしい。一応安心した。アタシとしてもなるべく死人は出したくない。

 アタシはそのまま立ち止まる事無く走り、レーメイとオーレリアの腕を掴む。咄嗟の事だったため、まだロープを巻きつけたままの手で掴んでしまった。

「いたたた!? な、何を!?」

「キセガワ様、どうなされたので?」

「もう終わった。逃げるぞ。船が突っ込んでくる」

 アタシはそのまま二人の手を引き、その場から離れていった。



 それから少しの間走った後、後ろを振り向くと兵士達が全員退避しているのが見えた。これで一先ずは安心か。後は火船が突っ込むだけだな。

 そうして見ていると、ついに火船が突っ込んできた。誰も乗っていないにも関わらず、驚くほど正確に城塞のど真ん中に追突した。

 ビーバー達の働きもあってか、城塞は痛々しい音を立てながら足場が崩れ、そこから火が燃え移っていった。

 こんな事を言うのは何だが、綺麗なもんだ。ここまで派手に燃え上がってるのは見た事が無い。

「……上手くいったな」

「あの、私達何もしてないんですけど……」

 まァ、自分一人で行った方が早く済むと思って薬草探しに行かせたんだがな。

「そうですね。私の記憶に間違いが無ければ、キセガワ様から薬草を探すようにとの御命令が出ましたので、お嬢様と二人で探しておりました」

「……バッチリ覚えてんな。でも、まあいいじゃねェか。取りあえず第一目標達成だ。次は流石に手伝ってもらうぜ?」

「はい! えっと……次は何をすればいいんでしたっけ?」

「レナスの国王をぶちのめしに行く。あいつにはケジメをつけさせなきゃいけねェ」

 無論、どういう風にするかはアタシが決める事じゃない。だが、あいつを捕まえるのを他の奴にやらせるのは気が進まない。

 アタシは服に付いた汚れを軽く叩き落とし、服装を整える。

「さてと……謁見と洒落込もうじゃねェか」

 アタシは流れ行く川の音を聞きながら、レナスへと向かっていった。

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