第20話:協力者の下へ
風呂から上がったアタシ達は自分達の部屋に戻っていた。
次に行くべきはどこなのだろうか。
「なァ、次はどこ行きゃいいんだろうな?」
その問いにオーレリアが答える。
「……これは私の意見なのですが、ロードレイクに向かいませんか?」
「それは、どういう所なんだ?」
「はい。ロードレイクはかつて、水の都として栄えておりました。それ故に緑も豊かであり、綺麗な町でした。しかし、ある日を境に変わってしまったのです」
大方、水源が無くなったとかだろうな。アタシが居た世界でもありえる話だ。
「ある日、ロードレイクへと続く川に城塞が建てられたのです。それが原因で川が塞き止められ、干ばつが発生したのです」
なるほど。川を塞き止めたか。
しかし、いまいち分からねェな。
何でそこに行きたいんだ? そんな場所に『黎明』があるとは思えねェが……。
「なァ、本当にそこ行く必要あるか? アタシにはそんな所に『黎明』があるとは思えねェンだがな」
「キセガワ様。『黎明』は繁栄や創生を司る力を持っています。出来れば疑いたくはありませんが、ロードレイクの皆様が今一番欲している力だと思います」
繁栄と創生か……まァ確かにそんな状況の人間からすれば、喉から手が出るほど欲しい代物かもしれねェな。
「もし仮にロードレイクの皆様が犯人ではなかったとしても、協力を申し出る事は可能な筈です」
なかなかよく考えてるじゃねェか。
確かになるべく早く見つけたいところだしな。
アタシは立ち上がる。
「キセガワさん? どこ行くんですか?」
「ちょっと婆さんのとこに行ってくる。行き先を伝えとかねェと」
部屋を出たアタシはヴィアベルの婆さんの所へ歩いていった。
あの広間に入ると、彼女はまだそこに居た。
もう夜だから寝ているかと思っていたが、まだ起きていた様だ。
「おや、戻ってたのかい。どうだった?」
「軽くしか探してねェから何とも言えねェが、見つからなかった。ただ、捜索に協力してくれる人間は見つかった。トゥーリバー周辺はアイツに任せてもいいと思う」
「そうかい。それで? 何か用事があるからここに来たんだろう?」
ヴィアベルの婆さんはニヤリと笑う。
「ああ。ロードレイクとか言う所に行きたいんだがな、頼めるか?」
「ロードレイクに? あそこには港は無いよ」
そういやそうか。干ばつが起きてる様な所だもんな。海があったら干ばつはありえないか。
「じゃあ近くの町とかでいいからそこで下ろしてくれ。そっから歩いていく」
アタシがそう言うと、婆さんは人差し指をピンと立て、アタシを制止する。
「まあ待ちなよ。あそこには川がある。下っていった方が早い」
「……いや、塞き止められてるらしい。川を下るのは無理だろ。それに城塞もあるって話だ。下手に近付きゃお縄だぜ?」
それを聞いて婆さんは笑う。
「それ位は知ってるさ。だからねぇ……壊しゃいいんだよ」
何を言ってるんだこの婆さんは……壊すだと? アタシも実際にその城塞を見た訳じゃねェから何とも言えねェが、そんな簡単に壊せるもんなのか?
だが、この婆さんが何の策も無しにそんな事を言うとは思えない。何か策があるのだろう。
「どうするんだ? そんな簡単に壊せないだろ」
「いいや、壊せるさ。あの城塞はね、木材で出来てるんだよ」
木材だと? それは城塞としてキチッと機能してんのか? 火でも放たれたら終わりだろ。
「あそこは城塞なんてカッコつけた言い方してるが、見張り用なんだよ。川から近付こうとしてる奴らがいたら報告する。それだけのための存在なのさ」
「今の言い方だと、城塞を作った奴らが誰なのか知ってるみたいだな」
「ああ。レナスって言う小さい町さ。あそこのトップは肝の小さい男でね。命令して作らせたのさ」
なるほど。その肝っ玉の小せェ腰抜けが作らせた結果、その下流にあったロードレイクが被害にあったって訳か。
まァ助ける義理はねェが、その腰抜けの事はムカつくし、ぶっ壊すか。
「その城塞の目的は分かったがどうやって壊す? 正面から行くのは流石に危険だろ? ここの船じゃ川に入れねェだろうし」
「そこも考えてあるよ。今から協力者達の所に連れてってやる。そこで頼めばいい」
協力者? 他にもその城塞を壊したいと考えてる奴らがいるんだろうか?
とりあえず、ここはヴィアベルの婆さんに任せるか。移動はここの奴らに任せてる訳だしな。
「分かった。それまで部屋で休んでるぜ。着いたら言ってくれ」
「ああ。分かったよ。しっかり休んどきな」
アタシは軽く手を振り、広間から出て行った。
部屋に戻ったアタシはベッドに腰掛けた。
「おかえりなさい。どうでした?」
「城塞をぶっ壊す事に決まった」
アタシがそう言うと、オーレリアは少し驚いた様だった。
「……正気ですか? そんな事をすれば、レナスを敵に回す事になりますよ?」
「構わねェよ。腰抜けがテッペンやってる国だ。大した奴らじゃねェよ」
「だからこそなのです。あの国は自国を守るため、兵士達に非常に厳しい訓練をさせてると聞いています。錬度はかなりのものかと」
何を言ってやがるんだこいつは。アタシを舐めてるのか?
「心配いらねェよ。束になって来ようがねじ伏せてやるさ」
「……トワイライト王国では衛兵の皆様に捕まったではありませんか」
「あれは開けた場所で囲まれたからだ。アタシの得意分野はあらゆる物を武器に使う喧嘩殺法だ。町中での喧嘩の方が得意なんだよ」
オーレリアは呆れた様子でこちらを見たまま黙り込んだ。
心配し過ぎだ。それ今はこいつらもいるんだ。頼りになるこいつらがな。
「さっ、もう夜だし寝るぞ。明日には協力者の所に着くかもしれねェンだしよ」
「えっ? 他に協力してくださる方がいるんですか?」
「ああ。どこの誰かは知らねェがな。ほら寝るぞ」
アタシはベッドに横になり、目を瞑る。
明日は早いかもしれない。なるべく体力を回復させておかなければ。
「あの……夕食は?」
レーメイの困った様な声が聞こえてくる。
別に一日位は食わなくても大丈夫だろ。ここにいる間はいつでも飯が食えるんだし……。
「あの……キセガワさん……夕食……」
しつこいなこいつ……寝れば気にならないだろ……。
「キセガワさん……」
「だーもーうるせェなっ!! オーレリアと一緒に食いに行けよ! アタシは眠いんだって!」
レーメイは残念そうな顔をしながら、オーレリアを連れて食事へと向かっていった。
ったく……お姫様ってのは一人で飯も食えねェのか。一人で行けよ一人で……。
アタシは再び目を閉じ、眠りへと入っていった。




