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落伍者とお姫様 ~異世界の冒険~  作者: 鯉々
第3章:海の上の町
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第11話:懐かしい顔、新しい顔

 船から出たアタシ達は、まず目の前にある船に移る事にした。

 今度は踏み外さないように気を付けねェとな。

「あっ!?」

 ……分かってたよ。

 アタシは振り向き、レーメイに手を伸ばし、引き上げる。

「す、すみません……」

「まァ……気にすんな」

 隣の船に移り終わったアタシは船に付いている看板を確かめる。

 これは、この絵は食事処か?

「キセガワさん?」

「ガキ。腹減ってねェか?」

「そうですね……少し空いてますね」

「じゃあ決まりだな」

 アタシは二人を引き連れ、中へと入る事にした。どうせオーレリアはまた訳の分からん事を言うだろうが、無理矢理にでも食わしてやる。


 中は木製の船という事もあってか、全体的に落ち着いた雰囲気があり、悪くない所だった。

「おーい! 誰かいねェのかーーー!!」

 アタシが大声で呼ぶと、奥の方から見た事のある顔が出てきた。

「はーい! あ! あんた!」

「おう。久しぶりじゃねェか。まだくたばってなかったンだな」

 あの海賊船に乗った時に出会った料理人だった。正直こいつはあそこで一生働くかくたばるかすると思ってたから、これは意外だな。

「お久しぶりです!」

「お久しゅうございます」

 レーメイとオーレリアも覚えている様で挨拶をする。そういやァこいつらもあそこで飯食ってたな。

 しかし、懐かしい再会を他所に男は怒っているようだった。

「酷いじゃないですか! 見捨てるなんて!」

「別に助けるとは言わなかっただろ」

「でも普通助けるでしょ!?」

「甘えんな。それより、何か作ってくれよ。料理人なんだろ?」

 男は不満そうな顔をしながらメニューを出した。

「……お好きなのをどうぞ」

「何機嫌悪くしてんだよ。みっともねェなァオイ」

 男の方を見ながらメニューを二人の方に滑らせる。どうせ選ぶのに時間掛かるだろうし、先に選ばせといた方がいいだろ。

「……」

「お前ェそれでもプロか? 客の前でくらいビシッとしろよ」

「まさか……また会うとは思いませんでしたよ」

「あ? おう。まァそうだな」

 喋りにくいなァこいつ……こんなんで客商売出来んのかよ。

 アタシはテーブルに肘を付きながら、男の方に向く。

「あのさァ、別にこれからお前ェがどんな人生歩もうがアタシの知ったこっちゃねェけどさァ、不愉快だから言わせてもらうぞ? 客の前では無理にでも明るくしろ」

「何を……言ってるんですか……」

「だァかァらァー、そういうのが気に食わねェって言ってんだよ。男の癖に細かい事をいつまでもウジウジと……情け無ェとは思わねェのか?」

 アタシが話している間に二人とも選び終わった様で、こちらにメニューを渡してくる。

 流石に二人とも居心地が悪そうだし、このくらいにしとくか。

 アタシはメニューを流し読みする。

「……まァ、アタシからの意見はここまでしとく。それより注文だ。アタシは『カレイの煮付け』を頼む」

 レーメイ達に目線を飛ばす。

「あっ、私はえっと、この『鮭のムニエル』? でお願いします」

「私もそれでお願いします」

 何だよ同じの頼むのか。料理を見比べて楽しむって事が出来ねェじゃねェか。

「……それじゃあ作ってきますね」

 男は相変わらずといった感じで厨房の方へと入っていった。

「キセガワさんかっこいいですね!」

「あ? 何だよ急に」

「だって、あんな風に年上の人にもちゃんと叱れるなんて凄いです!」

 なァにをこいつはまた……ワルに憧れる年頃か?

「あのなァ、言っとくがな、アタシはああいうのが気に入らないから言っただけだ。それに、アタシの真似とかは絶対すんなよ」

「どうしてですか?」

「基本的に人間関係は穏便に進めるべきだ。アタシはそういうのが出来ねェからこうやってるだけだ」

 突然オーレリアが合いの手を入れる様に入ってくる。

「そうですよお嬢様。キセガワ様のは悪い例です」

 他人に言われるとちょっとムカつくな……。

「まァとにかく真似すんな。お前ェは今のままでいい」

「そうです。悪い例は真似してはいけません」

「うーん……二人がそう言うなら……」

 こいつが素直な奴で助かったぜ……。確か、あっちの世界に居た時も妹弟子の小幸がこいつみたいな事言った事があったなァ……。



 それからしばらく待っていると、男が料理を持って厨房から出てきた。

「お待たせしました」

 机の上に置かれた料理はどれも美味しそうに出来ている。

「美味そうじゃねェか。やりゃ出来るじゃねェかよ」

 アタシは男を肘で軽く小突き、三人で食事をとり始めた。

 味付けはアタシにとっては特に文句のあるものではなく、よく知った味で安心出来るものだった。

 レーメイもナイフとフォークを使って綺麗に食べている。流石はお嬢様と言ったところだ。

 オーレリアの方はナイフとフォークは上手に持ててはいるものの、やや動きがぎこちなく、危なっかしい食べ方だった。こいつ本当に今までどうやって生きてきたんだ……?

 ここである事に気が付いた。

「なァオイ」

「……何ですか」

「いや何ですかじゃねェだろ。飲み物とか無いのかよ?」

「あっ……」

 え、こいつ、マジで忘れてたのかよ。気付いた時嫌がらせで出さないのかと思ってたぜ……。

 その後、コップに入れられた水が運ばれ、水分を摂る事が出来た。


 食事を終えたアタシ達は店を出る事にした。

「オイオーレリア。支払い頼むぞ」

「はい。お任せ下さい」

 傍から見たら年下に金払わせるクズみたいだが、アタシが金持ってるよりかはこいつに任せといた方が安心出来る。こいつは真面目で几帳面だしな。

「……はい。確かに確認しました。またのお越しをお待ちしてます」

「おう。美味かったしまた来るぜ」

 顔が引きつってはいたが、ちゃんと愛想笑いしようとしてたのには好感が持てるな。

 店を出たアタシ達は周囲を見回す。

 先程まで静かだったシップジャーニーは陸に物を売りに行っていた者達が帰ってきたからか、騒がしくなっていた。

 なるほど、これが普段のシップジャーニーか。ちょいと喧しいが、祭りみたいで悪くない。

 周囲を見回していると、アタシ達の所に一人の少女が近寄ってきた。

「あれ? 見ない顔だね。どちら様?」

 少女は動きやすさを重視してかスパッツを履いており、胸元にはサラシを巻いている。太目の眉毛からは海で生きる人間らしい力強さを感じる。

「ああ、ちょっとの間同行する事になった。詳しくはヴィアベルの婆さんに聞いてくれ」

「提督に?」

 こいつ今何て言った? 提督だと?

「提督? そういう呼び名か?」

「うん。何かあの人、昔はある王国の水軍大将だったんだって」

 中々納得出来るな。あの婆さんならそういうのも似合いそうだ。

 しかし、提督か。……フッ、海の上って事もあって頼りになりそうだな。

「へェ、なるほどなァ。ところでお前ェ名前は?」

「おっと! そういや言ってなかったね! 私はペスカ。ここで漁師やってるんだ」

 漁師か。通りで動きやすい格好してる訳だ。色気の欠片もねェがな。

「ペスカか。アタシは喜瀬川雅」

「珍しいねぇ! 聞いたこと無い名前だよ!」

 こいつはニキタマって所の事は知らねェのか?

 アタシがそれを尋ねる前に、レーメイが自己紹介を始めた。

「私はレーメイ・トワイライトです」

「トワイライト? 何かどっかで聞いた事がある気が……」

 こいつはあんまり他の国の事は知らねェのか。船で移動してる割には珍しいな。

「あっ! そうだ! トワイライト王国! あれ? って事は……え?」

 気付いたっぽいな。

「えぇ!? じゃ、じゃあもしかして、あの、お姫様……?」

「はい。そうですね」

 レーメイは少し困った様な笑顔を見せる。こいつとしては、あんまり持ち上げないで欲しいんだろうな。

「わわわ……どうしよ……な、何か気さくに話しかけちゃった……」

「気にしないで下さい。気軽に話して下さいね」

 そういう事言われるとかえって気軽になれないんだよなァ。まァ、アタシがどうこう言う事でも無いか。

 あわあわしているペスカを他所にオーレリアが話し始める。

「私はお嬢様の元で働かせる頂いております。オーレリアと申します」

「え、え? えっとぉ……」

 あーあー、混乱してらァ。こいつももうちょっと空気を読めりゃいいんだがなァ。

「どうかされましたか?」

「い、いやえっと……」

「私の事もどうぞ気軽に『オーレリア』とお呼び下さい」

「う、うん? えっと、オーレリア?」

 あっ、この感じ細かく考えるのを止めたな。よく見る顔だぜアレは。弟弟子の一八いっぱちもよくああいう顔するしな。

「まァ何だ。しばらく世話になるって事だ」

「あっ、うん。よろしく」

 そうやってアタシ達が話していると、他の船の乗組員達が掛け板を外し始めた。

 これは出発するって事か?

「あ! ごめん! ちょっと私も行ってくる! 出航の準備しないと!」

 そう言うとペスカは大慌てで奥の方へと走っていった。こんな場所であれだけ動けるのも慣れから来るものだろうな。

「さてと、アタシらも戻ろうぜ。ここにいたらしばらく戻れねェぞ」

 アタシ達は今度こそ踏み外さないようにしながら、中心にある巨大船に戻っていった。

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