チャプター9 弱者は死の安息を得・・・強者は・・・
何かが破裂した音がしたので俺は車を止めるとオッサンが話しかけて来た
「何だ、どうした?」
「パンクだ。直してくる」
次は女性が心配そうに話しかけて来た
「まだ追ってくるんじゃないの?」
「運転席に入らないだろ、あのボスの腹じゃあ。追いついて来れねぇよ」
気にせず車を降りタイヤを交換する
「タンタン」
「ちっ!?」
後ろから銃弾が飛んでくる。振り返るとスロースのキングが両手の爪を足のように使い走っていた。
「ハイエナァ!」
「まるで四足で走る獣だな」
オッサンがこちらを見てこう言った
「どうするんだ」
「始末してくる。待ってろ」
俺はショットガンを手に取りスロースキングの所へむかった。去り際にGSSの連中がもめるような声が聞こえたが気にしなかった
「おい!パンク修理するから手伝え」
「置いていくの?」
「いざとなった時の用心だ。早くしろ」
俺はショットガンに弾を込めながら、追ってくるあの太っちょの方にゆっくりと歩いて行った。いつでも射撃姿勢を取れる様にゆっくり・・・ゆっくり…
「ジャア!」
「タンタンタン」
キングはコッパーに向かって発砲した
「音からして拳銃・・・この距離じゃ当たりっこない」
「ガシャン」
そう自分に言い聞かせながら弾の入れ終わった銃を構え、撃つ
「バン!バン!バン!」
「シィ!ハッハッ」
ヤツは腰をフクロウの首の様にひねり左右に避けながら突進してくる
「ちっ。身体の柔かい奴だ」
「バンバンバン!カッ」
弾が切れた隙にヤツが間合いを詰め爪を振り上げ叫んだ
「ブチ爆ぜろ!」
太っちょが爪を大きく振り上げた隙に脇に避け背中にリボルバーを撃ちこむ
「タンタン!」
「ガアッ」
倒れたヤツが動けないように両肩と骨盤を撃つ
「タンタンタン!」
「そのガタイじゃあ。拳銃で死ねないだろ」
マグナムは品切れ、手持ちの38口径じゃヤツのガタイじゃ止めを刺せない。そう考え俺は止めを刺すためにショットガンに弾を淡々と込め太っちょに近づいた
「カチャ、カチャ、カチャ」
「グ・・・待て!ヤツらが何を運んでるのか知ってるか!?」
太っちょは何かどうでも良さそうな事を言ってる
「・・・」
「カチャ、カチャ、カチャ」
「野菜を育てるプラントに必要な部品だ!水を汲み上げるポンプ・・・人工灯」
「ガシャ」
「あのような町より我らの土地の方が良い作物が育つ!お前を戦士として一族に迎え入れよう。ハイエナのように這い回る必要は無い。だから・・・」
弾も装填し終わり命乞いも聞き飽きたので終わりにさせてやる
「お前は理解していない。特に俺の様なフリーのスカベンジャーを」
「貴様ならいずれ族長にもなれる・・・それだけの器だ」
もう奴はこちらの話は耳に入っていない様だ。だが聞く気は無いのも俺も同じ、迷惑料代わりに聞いてもらおうと俺はとくだらない懺悔を呟き、お互いにかみ合わない話をし、二人の距離は縮まっていく
「俺にも昔は故郷があり町を助けるために駆けずり回ってたさ。だが衰退は止まらなかった」
「弱者は死の安息を得・・・強者は・・・」
ヤツはもう瀕死だが油断はしない。止めを刺そうと近づいた時が一番危険だからだ
「ハイエナなんて上等な物じゃない。俺は生き残るために故郷を捨てたんだ」
「導かねばならぬッ・・・血を絶やさず生きた者の証を・・・」
俺はうつ伏せに倒れるヤツの頭の方に回り込んだ。人間の視野は下に広いが上は狭い。ヤツが何かアクションを起こそうしたら首が大きく動く
「例え親友や家族とでも。俺は心中するのはゴメンなんだよ」
この距離なら、散弾でも十分に威力を出せる。そう思って引き金を引こうとした時
「ガァァッ!」
ヤツが見開いた目をこちらを見て叫び声を上げた。と同時にショットガンを撃ちこんだ
「バン!バン!バン!」