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荒廃した街で、退廃した俺たちは  作者: つくたん
堪えきれない答えに応える章
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休章 伝達

事態はすぐにヴァイスの連絡網によって通知された。

「敗者は全滅する。…お前たちの命を俺に預けてくれ」

白槙の肉声のメッセージ付きで。その言葉に異議を唱えるものはいなかった。

「タイヘンなコトになったネ」

やれやれと"灰色の賢者"は肩を竦めた。今回のことはヴァイス全体にかかる問題だ。白槙個人の問題ではないので"灰色の賢者"は手を出さない。傍観者でいよう。

仮に"灰色の賢者"が手を出したら事態は一瞬で終わるだろう。それほど強大な力を持っている。自分が手を下さずともどうにかなるだろう。

「そうだな」

肩を竦める"灰色の賢者"に白槙は頷く。労ってくれるのは結構だが机に座るのはやめてほしい。行儀が悪いことこの上ない。

提示してきた条件は一級10人と白槙を含めた11人との決闘。決闘といっても格闘技や何かの試合のようにステージの上で戦うわけではない。44-444区全体を使ったゲリラ戦。人数も均等ではない。

金網で囲まれた区画の中で、どちらかが全滅するまで殺し合う。敗北した側の組織は皆殺しだ。魔力持ちでないが故に傍観者となるしかない者たちも殺される。仮に一級と白槙が全滅した場合、ヴァイスに所属する二級以下は皆殺しとなる。あの狂気の闘技場に匿われている征服者(ヴィクター)の残党も然り。

だいぶ雑なルールだ。そして理不尽だ。征服者(ヴィクター)の残党たちに非常に不利。彼らはあの襲撃で戦力をすべて注ぎ込み、そして返り討ちにされほとんどを失った。残っているのは片手で数えるにも満たないだろう。

ただ殺されるだけだ。だがそんな不利な条件でも彼らは飲むしかなかったのだろう。戦うものとしての最後のプライドか、それとも単に匿った闘技場のオーナーの趣味か。

ヴァイスが負けるはずがないと思っているので白槙は淡々としている。ぴ、と手元の通信端末が通知を鳴らす。この決闘の仲立ちをする闘技場のオーナーからのものだ。ルールや日程の委細を詰めるためにこうして逐一連絡をしてくる。

今回の連絡はルールの最終確認だった。征服者(ヴィクター)の残党はすべてこちらで匿っている。逃がさない。だからヴァイスも団員を一箇所に固めておくように。仮にヴァイスが敗北した場合、団員はすべて連行する、と。要は敗北側の皆殺しがしやすいように手順を整えておけという内容だ。

「条件は飲もう。だがこちらも条件を出したい」

何だ、と応じる声。ここ数日考えていた内容を提案する。

「人数に差がありすぎてつまらんだろう。こちらの戦力を半減させたい」

ほほう、と楽しそうな声が返ってきた。圧倒的な戦力差での虐殺もよいが、拮抗する戦力同士の殺し合いもよい。思わぬ白槙の申し出に快く応じる。

「ヴァイスの後方支援担当の一級5名は参加しない。その5人分の代理をひとり出す。俺と前衛部隊5人、そして代理の7人がこちらのチームだ。どうだ?」

それでは弱いな、と返答がきた。11人が7人に減ったとしてもやはり人数差はまだ埋まらない。それならば、とあちらが提案する。

「その代役が死んだ場合、5人の首をはねる」

つまり、この決闘に参加し戦う一級の者たちを殺す。代役が死ねば一級は全滅、残りは白槙となる。征服者(ヴィクター)側は代役ひとりを殺せば一級をまとめて殺せるということだ。戦力差はともかく、人数差を一瞬で逆転できる。

「これでもしなければゲームは面白くないからなぁ」

不利な側に逆転の一手を用意しておくのも主催者の役目だ、と通信機越しの声が笑った。本当にゲームとしか見ていないようだ。

「…結果的に代理が10人の命の背負ってないか」

後方部隊である5人の代理だというのに、その代役の死の代償を前衛部隊が負うのか。普通そこは後方部隊の5人が殺されるのが道理でないのか。

「なぁに、守りきれればいいこと」

盤上の虐殺を楽しむためにどう人数差を埋めればいいか考えていたところだ。まさかヴァイス側から提案してくるとは。おかげでよいゲームが楽しめそうだ。くつくつと笑う。

「それで、代役は?」

顔と名前を把握しておきたい。どんな武具を持っているかなどは伏せておいて構わないが、顔と名前だけは知っておきたい。

要求に白槙が応じる。すでに用意してあったデータを送信した。

「こいつが代役だ」

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