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荒廃した街で、退廃した俺たちは  作者: つくたん
襲撃の始劇の章
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襲章 起動

緊急警報を聞いて梠宵は立ち上がった。

「犬」

手を払い、今まで文字通り椅子にしていた絖を持ち場へ返す。絖は大人しく梠宵に一礼し、持ち場である倉庫へと戻っていった。

「さぁ、て」

梠宵は医務室から隣の部屋に続くカーテンを引く。診察室の隣は彼女のプライベートルームだ。その通称は"調教部屋"である。

「いい子にしていたかしら?」

梠宵が見やった先には、床に跪く"犬"たちだ。この"犬"たちは梠宵の、というより医局の部下である。看護師といったところか。主な仕事は梠宵の助手だ。

梠宵がこの地位につく際、医術に見込みのある者以外を首にし、そして残った者をこうして"犬"に躾けた。絖もその一人だったが、ある日魔力持ちであることが判明して以降、"犬"と一級の両役を担っている。

普段は"犬"の役を優先するが今は非常時。絖には倉庫番としての仕事がある。そして、女王様たる梠宵にも医者としての仕事がある。

「仕事よ。わかるわね?」

一人ひとり、丁寧に拘束具を外しながら聞く。自由になったばかりの手足を動かして"犬"たちはそれに応えていく。いちいち細かく指示をしなくても役割を理解してその通りに忠実に動く。そうなるように躾けた。

折りたたみのベッドを片し多人数が収容できるように手筈を整えていく。止血剤や包帯などのよく使うものはあらかじめ備蓄も出しておく。すべての準備が整うのとほぼ同時に、怪我人が運ばれてきた。


爆発はまだ続いている。


緊急警報を聞いて忸王が素早く指示を出す。

「火、止めて! 元栓から!」

調理場のすべての火元を締めさせる。もしここから出火したら大変なことになる。侵入者もそれを狙うだろう。火元になりうるものを根絶し、包丁などの危険物を収納する。それが終われば食材の保護。包丁は武器になり得るし、食材は盗られたら困る。

「完了しました!」

「はい、それなら避難誘導を」

非常時の忸王、および食堂の役割は非戦闘員の避難誘導だ。回ってきた情報から安全な場所を探し、そこに誘導する。怪我人が出れば医務室へ運ぶ。

「あとは副料理長にお願いします」

「はい! お任せください!」

大木のような腕で胸を叩く。これなら安心だ。頷いて忸王は戦闘が始まっている階下へと走り出した。

もし逃げ遅れた人がいないように、戦いの渦中に身を投じる。戦える一級は今、忸王ぐらいしかいない。梠宵は怪我人の治療があるし玖天は情報処理、リグラヴェーダや絖だって自分の役割がある。

守りの薄い拠点をどうにかできるのは忸王ぐらいしかいない。


爆発はまだ続いている。

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