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荒廃した街で、退廃した俺たちは  作者: つくたん
無限に望む夢幻の章
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任務 夢幻

「疲れた…」

目的地へ向かう鉄道の中、黄炬は呟いた。休む時間もないとはこのことか。

刺された傷は1週間で治った。そこからは任務の連続。新人研修を兼ねた霜弑との任務から帰って来たら水葉からこうして呼び出された。ちなみに霜弑はというと、これまた別件の任務を行っているはずの捌尽に連れて行かれた。

「こんなことでヘタレないでくださいね」

一級ならこんなこと当たり前です。そう水葉は言う。そう、黄炬よりもいくらか幼い彼は一級なのだ。こう見えてもヴァイスの一角を担う幹部だ。

「ま、別に下がってくれててもいいですよ」

新人教育ということもあり、連れてきただけだ。戦力としては期待していない。だがそれは黄炬を軽んじているわけではない。何せ水葉は黄炬の力を知らない。実力を知らない以上軽んじようも重んじようもない。だから連れてきたのだ。黄炬の実力を知るために。

「後ろで休んでいてもいいですけど、僕の力にはなってくださいね」

そして、自分のために。


運搬用のトロッコを改造して作られた列車は所定の停留所に向かって進む。目的地に近いところで下車して移動する。そのはずだった。

「緊急事態発生! 線路に侵入者!」

運転士が叫び、鉄道が急停止する。突然の停車に乗客がざわめき始める。

「黄炬、奴らがレールに迷い込んだみたいです」

水葉が耳打ちする。黄炬は頷いた。自分から来てくれるのはありがたい。ありがたいがこのままでは無関係の人間まで巻き込んでしまう。

「運転士さん」

ちょうど自分たちがいるのは先頭車両だ。運転士まで扉一枚。扉を叩いて運転士を呼ぶ。怪訝そうな顔をする運転士にヴァイスの刻印が入った身分証明証を見せる。知名度は十分だろう。

「君、本当に?」

偽造は難しい。だから本物だろう。だがこんな、成人にも満たない少年と青年が。驚きを隠せない運転士に、水葉は適当にでっちあげる。

ひとつ。自分たちはこの通りヴァイスのメンバーだが戦闘員ではないこと。ふたつ。自分たちはこのまま降りて近くの戦闘員に助けを求めること。みっつ。この列車は引き返して近くの駅止まりにしておくこと。

それらを伝え、運転士に了承を取り付ける。

「それじゃ、お願いします」


「ったく」

憤慨しながら線路を走る黄炬。それに並走する水葉が宥める。

あれは大人を納得させるには必要な嘘だ。運転士から見れば好奇も水葉も子供だ。それがヴァイスの戦闘員、しかも片方は一級だなんて誰が信じるだろう。だから適当に嘘を混ぜた。

「ま、うまく物事を進めるには嘘も必要ってことですよ」

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