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荒廃した街で、退廃した俺たちは  作者: つくたん
郷人による凶刃の章
35/112

休章 敵意

翌朝。目覚めた黄炬がふと連絡端末の画面に目をやると、そこには目立つ色で緊急連絡と表示されていた。


緊急連絡。この通知はヴァイスすべてのメンバーに通達しています。

征服者(ヴィクター)と名乗る集団がヴァイスへ敵対宣言を発表しました。


「…つきましては、メンバーの安全確保のため単独及び無用の外出は控えるように、か」

長々と丁寧な口調で書いてあったが黄炬に読めたのはそれくらいである。

長文への耐性をつけるべきだろうか。悩みながら黄炬は起き出した。


ヴァイスの拠点内は緊急連絡のことでもちきりであった。

「黄炬!」

おはようさん、と伯珂が黄炬を呼び止める。もちろん口にするのはあの連絡のことである。

こういう風に武装集団に宣戦布告されるのはヴァイスにとって日常なので特に驚かない。任務の内容が相手の拠点潰しにすり替わるだけだ。

こういうものより、要人誘拐の救助だとかそちらの方が性に合っているのに。愚痴をこぼす伯珂の肩に置かれる手。

「伯珂、任務だぞ」

「ったく、待ち合わせ時間過ぎてんぞ」

罰として奢れよ、と軽口を叩く彼らはどうやら伯珂を迎えに来たらしい。まったく悪びれていない様子の伯珂にやれやれと肩を竦めた。

「話してるところ悪いな、今から任務だから連れてくわ」

「新人だろ、頑張れよ」

言うが早いか、彼らは伯珂の肩を掴んだまま引きずっていく。おい離せ自分で歩ける、脱走防止だ、などとふざけ合いながら外へと向かっていく。

「元気だね」

僕はあれほど元気がないや、と割り込んできたのは捌尽だった。その横には当然のように霜弑がいた。相変わらず顔色が悪い。

捌尽がどうしてこんなところに。声をかけてきたということは用事か。一体何の。身構える黄炬に捌尽は一枚のメモを見せた。

「さっき情報が来てね。ひとつアジトを見つけたみたい。ちょっと大きな工場だって」

とある区画の一角にある工場がずっと稼働している。工業製品を作っているわけでもないし、一体何を作っているのかと近隣の噂になっているらしい。目撃情報を集めてみれば、例の薬の生産施設ではないか、という可能性が浮かんだのだ。

「僕と霜弑だけで十分なんだけど」

曰く、本当に生産施設だとしたら建物ごと葬り去らなければならない。そのためには炎で跡形もなく消し飛ばせる黄炬がいると楽だからついてこい、新人研修中だからちょうどいいだろう。そういうことだった。

「まぁ、そういうことなら…」

任務もなく、やりたいこともなく、何をしようか困っていたところだ。少しでも頼りにされるなら、と頷く黄炬だったが、その後で気付く。あの規格外の化物が相手だということを。そしてそれを相手するのは規格外の曲者。

どうやら今日も心休まりそうもない。

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