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荒廃した街で、退廃した俺たちは  作者: つくたん
初めと始めの章
23/112

任務 霜天

身を隠したまま倉庫のひとつひとつを見回っていた霜弑は、ようやく目的のものを見つけた。それを眼前にして、霜弑は呆れたように息を吐いた。

「…まったく……」

こんなものを現代の力と呼ぶか。作業台に放り捨てられていた仕様書を拾い上げ、懐にしまう。今回の任務の目的は達成できた。あとは帰還するだけ。ついでに黄炬を拾っていくだけだ。

「誰だ!」

厳しい誰何の声が刺さる。霜弑はゆっくりと振り返った。鉱石のような紫の瞳が硬質的に背後を見た。倉庫の見張りが戻ってきたのだろう。何人かの人影が見えた。

「…5人か」

こんなもの邪魔にもなりはしない。霜弑は無視して歩き出す。彼らが立ちはだかる倉庫の出入り口へゆっくりと歩み寄っていく。止まれ、という言葉も黙殺する。真ん中の男が銃を抜いた。銃口が霜弑の胸に定められる。それでも霜弑は歩みを止めない。

「止まれって言ってんだろ!」

発砲、直撃。しかし霜弑は止まらない。直撃したはずの霜弑の胸には氷が張り付いていた。厚く張った氷が銃弾を止めていた。

「まさか、"凍天"――」

男の言葉が終わらない内に霜弑は彼らの中心を素通りしていく。男たちの輪から最後の一歩が踏み出されると同時。

ぱきん、と彼らは凍りついた。動かない。動けない。すべての生命活動を停止した彼らの横を、大剣を手にした霜弑が通り過ぎていく。冷気を携え、霜柱を踏みつけて、その名に相応しく、霜すらも殺すように。


そのまま冬の朝に霜が降りるように静かに霜弑は歩いて行く。黄炬は死んでいないといいが。回っていない倉庫のひとつを覗くと、そこに黄炬がいた。左腕はぴくりとも動かない。折られたか。

だから一撃で倒せと言ったのに。そうでなければこうなる。いい勉強代だろう。任務を達成できた今、本来なら放っておくが、新入りへの慈悲だ。殺される前に拾ってやろう。

「…"ラグラス"」

氷剣ラグラス。それが霜弑の操る武具の名だ。彼の持つそれは冷気と氷を操る大剣。すべてのものを閉じ込め、氷の中に沈黙させる。


天まで凍らせ、霜で弑す。故に"凍天"。


そして音もなくすべてが終わった。床に刺さった大剣から伝う冷気は霜弑と黄炬以外をすべて凍りつかせる。命は取らない。氷で四肢を封じただけだ。それも要件が終われば命も凍らせるが。

「さて、聞きたいことがある」

質問というよりは確認だ。わざわざ聞かなくても明らかなことなので質問も確認も必要はないが、念のためだ。

「ここで何を作っていた?」


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