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荒廃した街で、退廃した俺たちは  作者: つくたん
初めと始めの章
22/112

任務 所詮

前方にある倉庫に火球を作って投げ込め。中にあるものに構うな。灰にしろ。それだけを指示して霜弑は傍観に回ることにした。煙草に火をつけて物陰から様子をうかがう。

黄炬は指示されたままに火球を創生し、投げ込む。コントロールは悪くない。窓をぶち破って侵入した火炎は着弾と同時に爆ぜる。

成程、ものに当たると爆発する火の玉か。霜弑が頭の中で報告事項を記す。ただ火を起こすだけならあんな爆発跡は残らない。爆ぜる炎なら納得だ。362-5区はそうやって消えたのか。


「くそっ、ヴァイスめ!」

2人死んだ、と状況を叫びながら炎上する倉庫からまろび出る。

「応援は!?」

「応答なし!」

「だろうな!!」

畜生、と片腕を失ったばかりの男は上着で肩を縛って止血しながら唸る。

あいつのせいだ。倉庫前で立ち尽くす煉瓦色の髪の青年を見つけると同時に隻腕の男は駆け出した。

「お前のせいで!」

「囲め! やっちまえ!」

隻腕に続くように他の者たちも黄炬を狙う。猪突猛進に突き進んでくる彼らは物陰に潜む霜弑に気付かない。黄炬は慌てて火球を作り出す。これをぶつければ死んでしまうという危惧は、眼前に迫る殺意によって抜け落ちていた。やらなければやられる。殺される。死にたくない。

しかし、咄嗟の一撃は殺意みなぎる男たちの足を止めない。頭に当たり、頭蓋が弾けた隻腕の男の死体を乗り越え一直線に黄炬を地面に叩きつけた。起き上がる間など与えず馬乗りになると、文字通り袋叩きにする。

一撃で全部吹き飛ばさないからこうなるんだ。報告のための文章を脳内で構築しながら霜弑は目の前の光景を眺める。助ける気はない。お前が入ったのは初撃で潰さないと潰される世界だと知るいい機会だ。

「情報を吐かせよう。2番倉庫に運べ」

殴られ続けて気絶した黄炬を見ていくらか気が済んだのか、頭巾の男が指示をする。

3人に引きずられるようにして黄炬はいずこかへ運ばれていく。それを見送り、さてどうするか、と霜弑は思案する。火の着いた倉庫はこのままにしておくらしい。下手に消化をして水を浪費するよりいっそ燃え尽きさせてしまった方がいいらしい。

倉庫街というものに火事は天敵だ。だから消化設備などは過剰なくらい気を使うものだが。それがないとは妙なものだ。ではその消火設備を削ったぶん、何がある。

「…調べる必要があるな」

それまで悪いが黄炬は放っておこう。情報を吐かせると言っていた。黄炬が本当に何も知らない新入りだと判明するまで殺されはしないだろう。判明したら殺されるだろうが、死んだら所詮それまでだ。


「おい、起きろ」

声と同時に腹部に衝撃。腹を殴られた痛みで黄炬は目を覚ました。肺から空気を強制的に押し出された黄炬は盛大に咳き込む。それを冷たく見下ろした頭巾の男は黄炬の髪を掴んで上を向かせる。

「お前一人か、仲間は?」

と言っても簡単に答えるような根性ではないだろう。こういうのは最初に痛めつけておいて、あとからその恐怖を思い出させる方が効く。

すっと表情を消し、男は黄炬の左腕を捻り上げる。そして。


ごきん。

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