俺終了のお知らせ
最近こんな噂が広まっている。
「人間が神隠しに遭うらしい」
「学生しか神隠しに遭わない」
「男女見境ないらしい」
「被害者の共通点はいわゆる底成績らしい」
実にくだらない話だ。
学生が失踪した真偽はともかく神隠しなど有り得ない。
おおかた変質者の仕業だろう。
警察は何をしてるんだ……。
今日も俺は2chを見ながら考える。
「天才の俺には関係ない話だが」
自慢ではないがーー
俺は全国模試で常にトップに君臨している。
「しかしなんで底成績の奴らばかり狙うかねぇ」
そんな事オレが知るか――
脳細胞が語りかけてくる。
キーンコーンカーンコーン…
唐突にお昼休みを告げるベルが鳴り響く。
「そんな事はどうでもいい、学食へ行くか」
俺は重い腰を持ち上げ、屋上から学食へと向かった。
授業はもちろんサボりだ。
わいわい……がやがや……。
今日も学食は喧騒に包まれ、
豚のように餌に群がる学生達がいる。
「豚共がっ」
いつものように一人呟く。
まあ、ここに来た時点で俺も豚の一員だが。
「よお、白銀!』」
考えこんでいると後ろから声を掛けられた。
後頭部にバコッというチョップと共に……。
「御堂…お前死ね」
振り返りざま俺は言い放つ。
こいつの名前は御堂 瞬
無神経でデリカシーの無い男だ。
ちなみに俺の名前は、
白銀 凛
凛という女みたいな名前が嫌いだ。
つーか白銀も嫌いだ。
「つれないなあ~しけた面してたから挨拶してやったのに」
「俺に構うな他をあたれ」
俺がキツく言うと御堂は少し怯んだ表情を見せた。
と思ったが全然怯んで無さそうだった。
「ねぇ、みんな今みた!?御堂が白銀さんの頭叩いてたよ!」
「うわ、最低ー!」
モブ女子達が一斉に御堂にブーイングをしはじめた。
モブ女子GJ!!
女子に感謝をしつつ、この隙に俺は学食を離脱した。
「女子に味方されるとか、やっぱり俺ってモテるなぁ……」
そんな風に思わずにはいられなかった。
苦笑いが聞こえた気がしたが気にしない。
お昼休み。
学生に許される安息の時間。
その終わりを告げる、ベルが脳裏に鳴り響く。
俺は今日も屋上のベストポジションで授業をサボっていた。
「べ、別に授業が嫌いだからサボってるわけじゃないんだからね!!」
「俺だって授業出たいけど人見知りでパニックになるから出ないだけなんだからね!!」
誰かにサボりについて突っ込まれそうなので、一応弁明してサボりを正当化しておいた。
周りを見渡してみたがオレ以外には誰もいない。
「画面の外から視線を感じた気がするけど気のせいか」
……画面って何だ??
自分で放った言葉に対する解は見つからなかった。
今日も屋上で過ごしていると学生達が校舎から校門へと歩き始めていた。
どうやら今日も無為に1日を過ごしてしまったらしい。
低く沈んだ夕焼けが俺の目に入り込む。
「さて、俺も家に帰るか」
そして今日も俺にとってのいつも通りの1日が終わろうとしていた。
あんな事が起きなければ!