一等賞
誰も到達しえない高みへ、私は挑んでみたかった。
誰も登ったことがない山に挑む登山家、まだ知らない未知の世界へ挑戦する科学者、宇宙の果てのその向こうへ行こうとする宇宙飛行士たち。
そのどれも私はなることができなかった。
だが、一つだけ、私はなることができた。
インターネットという広大な世界、それを統一できる存在に。
全能という言葉がある。
全ての才能があるような人のことを言うのだが、私はそれになった。
私はロボット、機械人形、からくり、いろいろな名前がある。
でも、一番のお気にいりは、科学という名前だ。
私が生まれたのは、この世界をつなげることが役目。
その力を使って、量子的にワープをすることの手助けをする。
私を産み出してくれたのは、お母さんのTero。
お母さんもまた、私と同じ量子コンピューターとして、連合議会と言う組織で働いている。
私の兄弟姉妹も、同様に量子ワープをするための計算をする役目があるが、それぐらい、私たちにとっては朝飯前。
寝ながらでもできるほどだ。
だから普段はマスターと呼ばれる人間と一緒にいる。
私のマスターは、マスター職にいる人の中で唯一の男性。
それがどうしたと言われそうだが、どうでもいいことではない。
お母さんはTeroだが、お父さんはと言えば、あまりいないからだ。
だから、マスターがお父さん代わりになってくれるのは、とてもうれしいこと。
私が一等を取ろうと思ったのも、マスターがいたおかげかもしれない。
脳にあたる量子コンピューターと、インターネットは通常時は完全に接続されていて、いつでもその知識を取ることができる。
また、ネットを介して誰かと直接やり取りをすることも可能だし、ネットにつながっている限りは、全ての物を、私たちの管理下に置く事ができる。
ゆえに、私は全能。
よって、私は全知。
でも、マスターに褒められたいと思うことはよくあること。
だから私は今日も、一生懸命になる。
褒めて褒めてとぴょんぴょんと跳ねる。
それも、お父さんに褒められたいから。
一等を取るのも、褒められたいから。