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眼鏡

掲載日:2026/09/08

過去に書いていた小説のクライマックスです。もともと連載作品のラストにしようか迷っていたのを思い出して、今日投稿します。楽しんでいただけたら幸いです。


―――千春、もう会えなくなるかも。


あの日、かすみさんにそう告げられた時、僕は何も言葉が出なかった。


“どうして、そんな大事なこと言ってくれなかったんだ”


そういう怒りとか、悲しみよりも先に浮かんだのは、漠然とした非現実感だった。


「嘘だって、言ってくれよ。」


当たり前みたいに傍にあった彼女の笑顔。


それが見られなくなるって事実に、いまいち実感が湧かなかった。


……だけど、いくら彼女に電話をかけても繋がらない。


そのことが、話の真実味に一層拍車をかけていた。


「陽人……」


政宗の言葉が、何一つ耳に入ってこない。


時間差で届いたいろんな感情に、耐えきれず胃の中がせり上がりそうだった。


《どうして彼女は……、あのとき、もし……、最後の言葉の意味は……、


ぼくは、僕は彼女のことを――――?!》


パシンッ!!


両頬に鋭い痛みが走った。


意識が引き戻されて、気づいたら政宗の顔が目の前にあった。


「……陽人、お前はどうしたいんだよ?彼女の事をどう思ってるんだよ?」


「それは―――」


胸ぐらを掴まれ、グイッと引き寄せられる。


「いい加減ッ!!自分の気持ちに正直になれよこのオタク野郎!!」


「っ?!」


首元に彼の指が深く食い込んだ。


「自分の好きに一直線な ”ガチオタク” それがお前なんだろうッ!!」


政宗の、こんなに鬼気迫った表情は初めてだった。


息を荒げつつ、それでも必死に伝えようとする彼の姿は、

冷え切った僕の心を確かに溶かした。


《もう僕に、迷いはない。》


彼の右腕を掴み返した。


その手がゆっくりと解かれていく。


「……目、覚めたか?」


「あぁ。僕にはやらなきゃいけないことがあるって気づけたよ。」


キッと、彼を見つめた。


「だから、協力してくれ―――政宗。」


「それでこそ、俺の相棒だ。準備は良いか?」


「―――おうよっ!!いつでも準備OKよ。」


眼鏡を上げて、涙を拭った。


「「さぁ行こうか、彼女の元へ!!」」


二人そろって駆けだした。


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