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断界の英雄  作者: 明太子
技能者たちの黎明
8/61

ようこそ断界戦線へ

蒼真は刀を下ろした。


静寂が広がる。


悠雅が地面を見つめながら呟く。

「……妙だな」


「え?」

蒼真が振り向く。


「こんな場所に鬼が現れるはずがない」


その瞬間――


パチン、と軽い音が響いた。


「その通りだ」


聞き覚えのある声。


蒼真は振り返る。


木々の間から歩いてきたのは、鎖を肩にかけた男――

鳳条迅だった。


「迅さん!」


蒼真は思わず声を上げる。


迅の隣には、もう一人の人物が立っていた。

フードを被った人物が、静かに鬼が崩れた方へ手を向ける。


すると――

消えたはず鬼の体が黒い粒子となりフードの男の元に集まっていった。


蒼真は目を見開く。

迅は腕を組み、静かに頷く。

「当然だ。そいつは本物の鬼じゃない」


「え?」


悠雅が横で小さくため息をつく。

「……やっぱりか」


迅の隣にいた人物がフードを下ろす。

「驚いた?」


その人物は軽く笑った。

「鬼は私が操ってたんだよ」


蒼真は完全に固まった。

「えええ!?」


迅は少し笑う。

「落ち着け、蒼真」


そして真剣な目になる。

「これは試験だった」


「……試験?」

蒼真が聞き返す。


迅はゆっくり頷いた。

「イレギュラーな状況にどう対応するか」

「仲間とどう連携するか」

「恐怖の中でも戦えるか」


迅は蒼真を真っ直ぐ見つめる。

「すべて見させてもらった」


蒼真は言葉を失う。


迅は静かに続けた。

「結論から言う」


一瞬の静寂。

「蒼真」

「君は――合格だ」


蒼真の目が大きく開く。


迅は言った。

「今日から君は」

「断界戦線のメンバーだ」


風が静かに吹いた。

蒼真はしばらく言葉が出なかった。

やがて、ゆっくりと拳を握る。

「……はい」


その声には、確かな決意が込められていた。

迅は小さく笑う。


「ようこそ」


「断界戦線へ」

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