包囲突破
泥の戦場。
無数の人形が蠢く中、蒼真が一歩踏み出した。
「行くぞ」
次の瞬間、地面を蹴る。
一直線に前へ蒼真の出せる最高速度で走り出す。
刀が閃く。
一体、二体、三体。
迫る人形をすべて斬り倒しながら、道を切り開く。
後ろで奏が走る。
蒼真の背中だけを見て。
「前だけ見てろ、奏」
短い言葉。
だが奏にとってはそれで十分だった。
左右から衝撃が走る。
灯真と黒魍だ。
黒魍が唸りを上げ、人形を吹き飛ばす。
さらに灯真の影鉄。
振り下ろされた一撃が、まとめて数体を叩き潰す。
人形がどんどん崩れていく。
泥が飛び散る。
三人の動きが綺麗に噛み合う。
蒼真が前を斬り開き、灯真が左右を潰す。
自然と逃げ場が消えていき、人形の流れが一点に集まっていく。
中心へ人形たちが押し込まれていく。
蒼真が一歩踏み込む。
「双閃裂空!」
中心へ押し込まれた人形が一気に切り刻まれる。
しかし一体だけ姿勢を低くして蒼真の攻撃を避けた人形のような者が一人。
蒼真が低く言う。
「……そこだ」
間合いを測るように、わずかに後ろへ引く。
灯真が笑う。
「逃がさないよ」
黒魍と灯真が共に踏み込み、逃げ道を潰す。
その瞬間――
周囲の人形が途切れた。
泥の戦場の中の空白。
中央に、二つの影。
奏と、人形使い。
人形使いがわずかに笑う。
「お前が来るか」
奏が拳を握る。
「タイマン張ってくださいよ」
静寂が、一瞬だけ落ちた。




