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鬼影、散る
蒼真の斬撃が鬼へと叩き込まれた。
ギィン――!
硬い衝撃音が森に響く。
だが今度は違った。
鬼の体がわずかに揺らぐ。
「効いてる…!」
蒼真は距離を取りながら叫ぶ。
地面を踏み砕き、再び蒼真へと襲いかかる。
「蒼真、気を付けろ!」
悠雅が手を掲げる。
「重力収束」
周囲の岩や木片が一斉に空へ浮かび上がる。
次の瞬間、それらが鬼へと叩きつけられた。
ドゴンッ!!
鬼の巨体が一瞬よろめく。
「今だ!」
蒼真は地面を蹴った。
視界の中で、鬼の動きが遅く見える。
拳の軌道、足の踏み込み、体の重心。
すべてが読める。
(速さだけじゃない……見える)
蒼真は鬼の側面へ回り込む。
鬼が腕を振るう。
だがその攻撃は、すでに蒼真のいた場所を通り過ぎていた。
「終わりだ!」
蒼真は大きく踏み込み、全身の力を刀へ込める。
鋭い斬撃が鬼を切り裂いた。
――ズバァン!
鬼の体が大きく揺れる。
数秒の静寂。
やがて鬼は膝をつき、その巨体が崩れ消えた。
土煙が舞い上がる。
蒼真は刀を下ろし、息を整える。
「……勝った?」
悠雅を見つめ、静かに言った。
「……ああ。だが妙だな」
蒼真が振り返る。
「妙?」
悠雅は鬼を見つめたまま続けた。
「こんな場所に鬼が現れるはずがない」
その言葉に、蒼真の背筋がわずかに冷える。
どこかで――
誰かがこの戦いを見ているような気がした。




