泥偶殲滅
泥が飛び散る。
蒼真の刀が振るわれるたび、
人形の体が裂け、崩れ、地面へと落ちていく。
だが――ぐちゃり。
地面に落ちた泥が、再び形を作ろうと蠢いた。
「……また再生する気か」
蒼真が低く呟く。
その瞬間、
「させないよ。」
奏の声が後ろから聞こえる。
奏が崩れた人形に手を触れている。
すると地面に広がった泥が、ぴたりと止まる。
動かない。
まるで時間が止まったかのように。
灯真が目を細める。
「……止めたの?」
奏が軽く息を吐く。
「はい。壊れた状態のまま、維持させてます」
その言葉に、蒼真が小さく頷く。
「なら――」
刀を構える。
「一気に減らす」
次の瞬間、蒼真が踏み込む。
一閃、二閃、三閃。
泥人形が次々と斬り裂かれ、崩れ落ちる。
だが今度は再生しない。
そのまま地面に広がり、ただの泥へと変わる。
灯真の隣を鬼が走っていく。
鬼が腕を振るうたびに、人形がまとめて吹き飛ぶ。
砕け、崩れ、そして――
動かない。
灯真が壊しきれなかった人形が泥を維持させている奏に向かって走り出す。
それに気づいた奏が立ち上がり、前に出る。
迫ってきた人形の拳を受け流し、
そのまま胴へ一撃を叩き込む。
泥の体が弾ける。
「これで――!」
蹴りで別の人形を倒す。
「終わりだ!」
三人の連携が輝く。
その度に、人形は泥へと変わり、動きを止める。
数は確実に減っていった。
やがて、周囲に立っている人形は、残り数体だけになった。
それ以外はすべて――
地面を覆う泥。
奏が息を整える。
「……倒しきれた?」
灯真が周囲を見る。
「いや……」
蒼真が静かに地面を見る。
「まだだ。」
足元の砕けた人形の残骸で辺り一面が、黒い泥で覆われている。
その量は異常だった。
奏が少しだけ顔をしかめる。
「……多くないですか?」
誰も答えない。
静寂。
その中で――
ぐちゃり。
小さな音がした。
蒼真の視線が動く。
地面の泥が、ほんのわずかに揺れた。
灯真の影がわずかに広がる。
「……何かいる。」
次の瞬間、背後の泥人形が一体、ゆっくりと首を傾け始めた。
その動きは、今までの人形とは違う。
生きているような、意志を持っているような。
それを見た奏が呟く。
「……あれ」
人形の目が、三人を捉える。
そして口元がわずかに歪んだ。
蒼真が刀を構える。
「来るぞ」
静かに、だが確実に。
次の戦いが、始まろうとしていたーー




