道を塞ぐもの
夜の道路を、一台の車が走っていた。
山へ向かう一本道。
街灯はほとんどなく、ヘッドライトだけが闇を切り裂いている。
車内には弐番隊のメンバーが乗っていた。
運転席には迅。
助手席には玲司。
後部座席にはその他弐番隊の十人が座っている。
車内はしばらく静かだった。
やがて雷牙が口を開く。
「で、場所はどこなんだ」
迅が前を見たまま答える。
「山奥の屋敷だ」
「屋敷?」
颯が少し身を乗り出す。
「こんな山の中にか?」
玲司がスマホの地図を見ながら言う。
「かなり古い建物らしい。昔の大地主の屋敷だ」
翠霞が腕を組む。
「いかにも何か出そうな場所ね」
玲司が笑う。
「幽霊でも出るんじゃねぇか?」
奏が小さく言う。
「縁起でもないこと言わないでください…」
その時、優雅が静かに口を開いた。
「問題はそこじゃない」
全員の視線が集まる。
「異能がいるってことだ」
蒼真が窓の外を見る。
暗い森が流れていく。
「何人くらいなんだ?」
迅は少し考えてから答えた。
「少なくとも三人」
「人形使い、蝶使い、天狗」
雷牙が笑う。
「上等じゃねぇか」
翠霞が呆れたように言う。
「あなた本当に戦い好きね」
その時だった。
玲司がふと顔を上げた。
「……待て」
迅が聞く。
「どうした」
玲司は窓の外を見ている。
「何か……来る」
空気が一瞬で変わった。
優雅が目を細める。
「俺も感じる」
蒼真が刀に手をかける。
「近いのか」
その瞬間、車が急に揺れた。
「っ?」
エンジンの音が止まる。
迅がキーを回す。
「……?」
もう一度キーを回す。
しかしエンジンはかからない。
雷牙が言う。
「おい、どうした」
迅が眉をひそめる。
「動かない」
「故障か?」
「いや……」
迅は首を振る。
「違う」
外の空気が妙に重かった。
まるで何かに押さえつけられているようだった。
玲司が静かに言う。
「降りた方がいい」
全員が車を降りた。
夜の山道。
冷たい風が吹いている。
森は静まり返っていた。
その時だった。
カツン。
乾いた音が響く。
誰かが歩いている。
闇の中から、一つの影が現れた。
細い体。
長いコート。
そして――
背後に並ぶ、いくつもの人形。
奏が息を呑む。
「……あれ」
翠霞が小さく呟く。
「敵ね」
男はゆっくりと笑った。
「やっと来たか」
その目は不気味に光っている。
指がゆっくりと動いた。
その瞬間、背後の人形たちが一斉に動き出す。
男が言った。
「歓迎してやる、断界戦線」
蒼真が刀を抜く。
灯真の周囲に黒い気配が広がる。
優雅の足元の空気が重く沈む。
戦いの気配が一気に膨れ上がった。
人形使い。
その口元が歪む。
「ここから先には行かせない」
山奥の屋敷へ続く道。
その入り口で。
最初の戦いが、始まろうとしていたーー




