黒鐘 時夜
夜の立体駐車場。
蒼真と迅、そして時間使いの男が向かい合う。
男は軽く首を鳴らし、親指と人差し指で輪を作る。
「さっきの続きだ」
次の瞬間、迅が地面を蹴った。
一瞬で距離を詰め、拳を叩き込む。
だが男は動かない。
輪の中に迅の体が入る。
一秒。
指が閉じる。
迅の動きが止まった。
三秒停止。
男は迅の横へ歩きながら、軽く拳を腹に入れる。
肘、蹴り、肩への打撃。
迅は動けない。
三秒後、時間が戻る。
ドンッ!!
溜まっていた衝撃が一気に来る。
しかし迅はそのまま前へ踏み込み、拳を振り抜いた。
男は後ろへ跳び、ギリギリで避ける。
「相変わらずタフだな」
蒼真が横から踏み込む。
蹴り、拳、回し蹴り。
蒼真の連続攻撃が男を追う。
だが男の指がまた輪を作る。
蒼真の体が輪の中に入る。
一秒、二秒、三秒。
蒼真の動きが止まる。
蒼真の意識は残っている。
(またか……)
男が近づく。
腹に拳、脇腹に蹴り、肩に肘。
蒼真はそれを見ているのに避けられない。
三秒後、時間が戻る。
衝撃が一気に体を襲う。
蒼真は地面を滑る。
「っ……」
それでもすぐに立ち上がり、再び突っ込む。
男が輪を作る。
また止められる。
何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、蒼真は止められる。
そのたびに攻撃を受ける。
だが蒼真は止められている間、ずっと考えていた。
(輪の中にいる時間でカウント)
(視界に入っている時間……)
(ならば)
再び蒼真が突っ込む。
男が輪を作る。
蒼真の体が入る。
一秒、二秒、三秒――
その直前、蒼真の前に刀が召喚される。
刃が蒼真の体を完全に隠す。
男の視界から蒼真が消えた。
「……?」
男の指が止まる。
カウントが止まった。
蒼真はすぐ横へ跳び、刀が消える。
そして再び踏み込む。
輪の中へ、一秒、二秒。
男が指を閉じようとする。
その瞬間、蒼真が地面を蹴る。
一気に距離を詰める。
迅が小さく呟く。
「……読んだか」
蒼真の体が回転する。
全身の力を乗せた蹴り。
ドンッ!!
蹴りが男の頭に直撃する。
衝撃で男の体が吹き飛び、コンクリートを滑って壁に叩きつけられる。
静寂、蒼真は息を吐く。
迅が隣で言う。
「頭を使ったな」
蒼真は少し笑う。
「止められてる間、暇だったので」
男は地面に座ったまま笑う。
「……はは…」
男は何かを数秒か考えた後こう言った。
「黒鐘 時夜だ、俺の名前」
2人は驚いた表情で時夜を見つめる。
迅が小さく息を吐く。
「……久しぶりに聞いたな、その名前」
黒鐘は肩をすくめる。
「弐番隊、だったか」
蒼真を見る。
「悪くない、入ってやる」
迅がその言葉を聞き、ニヤけながら時夜に聞く。
「ついでに聞くが、どういう心変わりだ?」
「色々と思い出したんだよ。あの人のことも、壱番隊のことも」
「…そうか」
その後二人は懐かしそうに話に花を咲かせていた。
二人とも笑っていた。
そんな気がした。
その日、弐番隊に新たな仲間が加わった。
その名は――黒鐘 時夜




