刃、鬼に届く時
鬼の咆哮が響いた瞬間、空気が震えた。
蒼真は刀を構えたまま低く息を吐く。
目の前に立つ鬼は、人間の倍以上の体躯。
黒い肌に、歪んだ角。
その目は獲物を見つけた獣のように蒼真たちを見据えていた。
「……でかいな」
悠雅が静かに言う。
蒼真は頷いた。
「でも……逃げるわけにはいかない」
鬼が地面を踏み砕いた。
次の瞬間、巨体とは思えない速度で突進してくる。
「来るぞ!」
悠雅の声と同時に、蒼真は地面を蹴った。
鬼の拳が地面を砕く。
土と木片が爆ぜる。
蒼真はその上を滑るように駆け抜け、鬼の懐へ飛び込む。
「はあっ!」
刀が振り抜かれる。
だが――
ギィン!
硬い音が響く。
「……硬い!」
鬼の皮膚は岩のように固かった。
その瞬間、鬼の腕が振り上げられる。
「蒼真!」
悠雅が手を掲げた。
重力が歪む。
蒼真の体が一瞬ふわりと浮き、鬼の攻撃が空を切る。
「今だ!」
悠雅が叫ぶ。
蒼真は空中で体勢を整え、再び地面へ着地する。
「助かった、悠雅!」
鬼が怒りの咆哮を上げる。
空気が震え、周囲の木々が揺れる。
悠雅は静かに鬼を見据えた。
「蒼真。こいつ、力は強いが動きは単純だ」
「うん、僕もそう思った」
蒼真は刀を握り直す。
「なら――」
悠雅が手を振る。
周囲の岩や木片が重力に引き寄せられ、空中に浮かぶ。
「動きを止める。そこを斬れ」
蒼真は小さく笑った。
「了解」
鬼が再び突進する。
その瞬間――
悠雅の技能が発動する。
「重力収束」
浮かんだ岩が鬼の体に叩きつけられる。
鬼の動きが一瞬止まった。
「蒼真!」
蒼真は地面を蹴る。
まるで風のような速度で鬼へ駆ける。
一歩、二歩――その間に蒼真の姿は鬼の懐へと入り込んでいた。
「……ここだ!」
蒼真は体を捻り、刀を振り抜く。
鋭い斬撃が空気を裂き、鬼へと叩き込まれた。




