三秒
夜の街、人気のない道路を、迅と蒼真が歩いていた。
街灯の光だけが、静かに地面を照らしている。
蒼真が横を歩きながら聞く。
「その時間使いって人、本当に元々仲間だったんですか?」
迅は前を見たまま答える。
「昔な」
蒼真は少し眉を上げる。
「二人とも弐番隊だったんですか?」
迅は首を振る。
「違う」
少し間を置いて言った。
「壱番隊だ」
蒼真が少し驚く。
「壱番隊……?」
迅は続ける。
「俺とあいつは、昔そこで戦ってた」
しばらく歩くと、古い立体駐車場が見えてくる。
建物の上階に、人影が立っていた。
手すりにもたれ、こちらを見下ろしている。
「久しぶりだな、迅」
迅は足を止める。
蒼真はその男を見る。
年齢は二十代半ばほど。
落ち着いた目をしているが、どこか冷たい空気をまとっていた。
迅が静かに言う。
「……まだここにいたのか」
男は軽く笑う。
「お前が来る気がしてな」
蒼真が小さくつぶやく。
「この人が……時間使い」
男の視線が蒼真に向く。
「新しい仲間か?」
迅が答える。
「弐番隊だ」
男は少し興味深そうに蒼真を見る。
「へぇ」
それから、ゆっくり立ち上がる。
「断界戦線か……懐かしい名前だ」
蒼真が聞く。
「壱番隊にいたんですか?」
男は少し黙る。
それから肩をすくめる。
「まぁな、みんなでよく暴れてた」
迅の表情は変わらない。
蒼真が聞く。
「なんで辞めたんですか?」
男は少し空を見上げる。
風が静かに吹く。
「さあな、壱番隊は窮屈だった」
迅が低く言う。
「嘘だな」
男は笑う。
「相変わらず鋭い」
静かな空気が流れる。
蒼真は一歩前に出る。
「弐番隊に来てください。俺たちは戦力が必要です」
男は少し驚いた顔をする。
「ずいぶん直接だな」
蒼真は答える。
「あなたは一目見て分かりました。強いです」
男は少し考えるように迅を見る。
「どうする?」
迅は短く言う。
「決めるのはお前だ」
男はしばらく沈黙する。
それから、手すりを越えて地面へ飛び降りた。
着地の音が静かに響く。
「久しぶりに試してみるか」
男は指を軽く鳴らす。
「弐番隊の実力」
蒼真が構える。
迅も静かに立つ。
男は笑う。
「じゃあ――」
次の瞬間、蒼真が前に出ようとした。
しかし動かない。
体が完全に止まっている。
「……?」
蒼真の目だけが動く。
男はゆっくり歩いて近づく。
そして蒼真の前で止まる。
「三秒」
男が静かに言った。
「お前の時間を今止めてる」
迅はその様子を見て、小さく息を吐く。
「……相変わらずだな」
男は少し笑う。
「だろ?」
三秒後、蒼真の体がようやく動いた。
蒼真は驚いた顔で男を見る。
男は肩をすくめる。
「さて、続き、やるか?」
迅と蒼真が同時に構える。
夜の駐車場で、戦いが始まろうとしていた。




