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断界の英雄  作者: 明太子
疾風決戦
55/65

虚骸

断界戦線本部ビル。


任務が終了してから数日経ち、

ようやく何人かが目覚めた。


そして目覚めたものだけ集められた夜の静かな時間。


高層階の会議室には今回の任務のメンバーが集まっていた。


長いテーブルの周りに座る隊員たちの姿は、普段の余裕ある技能者のものではない。


服は破れ、腕や肩には包帯。

誰もが天狗や蝶使い、人形使いとの戦いの激しさをその体で語っていた。


雷牙は椅子にだらっと座りながら頭をかく。


「くそ……まだ体いてぇ、何だよあの仮面のやつ」


向かいに座っている悠雅が腕を組む。


「お前最初に突っ込んだだろ、自業自得だ」


雷牙は顔をしかめる。


「いやいや!強そうだったじゃん!普通行くだろ!」


颯が軽く笑う。


「普通は様子を見る」


雷牙は不満そうに口を尖らせた。


「颯も途中で空飛びながら突っ込んでただろ!」


「俺はちゃんと考えてた」


颯はさらっと答える。


そのやり取りを聞きながら、翠霞は椅子に深く座って腕を組んでいた。


「……でも」


静かな声が会議室に落ちる。


「強かったのは事実ね」


場の空気が少し変わる。


悠雅もゆっくり頷いた。


「俺の重力でも止めきれなかった。正直、想像以上だった」


颯も天井を見ながら言う。


「風を完全に読み切ってた。ただの力押しじゃない」


何人かが口を揃えて

「戦い慣れてる」


響が項垂れた状態で言う。

「こっちも完全に戦い慣れてた。というか戦いを好んでたね」


その時、会議室のドアが開いた。


ギィ……


蒼真がゆっくり入ってくる。

体にはまだ包帯が巻かれている。


雷牙が驚いて声を上げた。

「おい蒼真!」


迅が柄にもなく心配したように聞く。

「もう動いて大丈夫なのか?」


蒼真は少し笑う。

「じっとしてる方が落ち着かない」


「それに……」


蒼真は空いている椅子に座る。


「俺も聞きたい、天狗のこと」


翠霞が天狗のことを蒼真に説明した。

会議室が少し静かになる。


悠雅が椅子に寄りかかる。

「最後に来た二人、蝶と人形のこと…どう思う?」


蒼真は少し考え、その後ゆっくり言った。


「敵……じゃない気がする」


蒼真がそう言うと、雷牙がすぐに身を乗り出した。


「いやいやいや!どう見ても敵だっただろ!天狗助けて逃げたんだぞ!?」


颯が腕を組む。

「確かにそうだな。戦いに割って入ってきて、そのまま連れていった」


翠霞も静かに頷く。

「ええ、少なくとも味方ではないわね」


蒼真は少し困ったように言う。

「まあ、俺は今この話を聞いて判断しただけだから。天狗たちと戦ったお前たちの方が言っていることはたぶん確実だよ」


雷牙が椅子にもたれながら言う。

「まぁ見てなくても分かるだろ。完全に敵だよあいつら」


悠雅が窓の外を見る。

「だが妙だ、天狗はまだ戦えた」


翠霞が目を細める。


「ええ、途中で終わるような戦い方じゃなかった」


颯も頷く。

「なのに引いた」


会議室の奥、窓の近くに立っていた迅が静かに口を開いた。


「引いたんじゃない」


全員の視線が迅に向く。

迅は続ける。


「止められた」


雷牙が眉をひそめる。

「……あの二人に?」


迅は頷く。

「天狗はまだ戦うつもりだった、だが二人が連れていった」


翠霞の目が少し鋭くなる。

「敵同士で戦いを止める?随分妙な関係ね」


雷牙が肩をすくめる。

「ほんと意味わかんねぇ!敵なのか何なのか」


颯が小さく笑う。

「世の中そんな単純じゃない」


悠雅が窓の外を見る。

「それより問題は天狗だけじゃない」


翠霞も同じ方向を見る。

「その話、私からしていい?」


優雅は小さく頷くのを見て翠霞は続けた。

「天狗は二つ技能を持ってる。一つはみんな分かっている通り天狗、そしてもう一つは自己再生。天狗の使っていた自己再生は魔獣のものと一緒。でも明らかに天狗は今まで断界戦線の戦ったことのある魔獣とは違った」


響が割って入り翠霞の話に補足を加えた。

「私が蝶使いと戦った時に彼女は自分は人間だと言った。その話はさっき迅さんには話した」


全員が驚いた表情で響を見つめる。

そして迅が続けた。

「響からその話を聞いた後すぐに総隊長に伝えに行った。その時に決まったことがある」


全員が息を飲んで迅の話を聞く。

「今回断界戦線弐番隊が初めて戦った奴ら、あいつらの使う技を技能ではなく異能と呼称し、奴らは抹殺対象だと決まった」


会議室の空気が少し重くなる。

そして迅がゆっくり続けた。


「次は奴ら三人に損害無しで必ず勝つ」


迅の目は光っていなかった。


ゴン……


小さな振動がビルを揺らした。

全員の視線が上を向く。


雷牙が眉をひそめる。

「……地震か?」


悠雅が首を傾げる。

「いや、今のは下からだ」


翠霞も少しだけ目を細める。

「地下……?」


迅は何も言わず窓の外を見ていた。


その頃、ビルの地下最深部。

封印室の奥で黒い塊が、

ほんのわずかに揺れていた。


それが何なのかを

まだ誰も知らない。


その名は虚骸。


それは静かに

目を覚まし始めていたーー

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