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鎖獄
天断風が草原を裂いたあと、地面には長く深い傷が残っていた。
削り取られた土と岩が散らばり、草原の形が変わってしまったかのようだった。
迅は鎖を軽く振る。
ジャラ……と静かな金属音が響く。
その音に天狗が少し眉を動かす。
よく見ると、草原のあちこちに鎖が残っていた。
岩、地面、木、砕けた岩壁。
戦いの中で打ち込まれた鎖。
天狗はゆっくり言う。
「なるほど」
迅は静かに答える。
「やっと気づいたか」
その瞬間、迅が鎖を強く握る。
ジャラララララッ!!
草原中の鎖が一斉に動いた。
地面から何本もの鎖が跳ね上がり、空中へ伸びる。
天狗はすぐに風閃で回避しようとする。
しかし逃げ道がない。
鎖が空中のすべてを埋めていた。
まるで鉄の檻。
迅が低く呟く。
「鎖獄」
次の瞬間、無数の鎖が天狗へ襲いかかる。
ドドドドドッ!!
鎖が天狗の体を貫き、胸や肩、腕を突き抜ける。
金属音と共に体が空中で止まる。
さらに鎖が地面へ打ち込まれる。
天狗の体は完全に固定された。
空中の磔、風が止まる。
天狗はしばらく黙ったが、やがて小さく笑う。
「なるほど……」
口から血が流れる。
「いい技だ」
迅は鎖を握ったまま動かない。
「終わりだ」
天狗は空を見上げる。
そして言う。
「いや」
その目が鋭く光る。
「まだだ」
しかし風はもう唸らないーー




