天断風
草原の空気が重く沈む。
上空では天狗の周囲に巨大な風の渦が生まれ、雲までもが引き寄せられるように回転していた。
草原の草が根元から揺れ、倒れている雷牙たちの服も激しくはためく。
迅は静かに鎖を握り直す。
すでに何本もの鎖が岩や地面、倒れた木に引っ掛けられている。まるで見えない檻が空中に張り巡らされているようだった。
天狗はその様子を見下ろす。
「面白いな」
風がさらに唸る。
「だが、その程度で空を封じたつもりか」
次の瞬間、天狗の姿が消える。
轟音と共に突風が草原を横切り、迅の横をかすめる。迅は即座に鎖を引き、岩へ体を引き寄せながら体勢を変える。
その直後、天狗が背後に現れる。
空気を裂く蹴り。
しかし迅はすでに鎖を振っていた。
ジャララッ――!
「鉄鎖乱舞」
複数の鎖が扇状に広がり、空間ごと天狗を叩き潰すように襲いかかる。
天狗は風閃で急上昇しながら回避するが、鎖が空中の岩に絡みついているため完全に距離を取れない。
迅はすぐに鎖を引くと、体が一気に空中へ引き寄せられる。
天狗へ急接近、そしてさらに鎖を投げる。
「蛇鎖」
鎖が一直線に伸び、天狗の腕へ巻き付く。
金属の輪が締まり、空中で動きが一瞬止まる。
迅はその鎖を一気に引く。
天狗の体が強引に引き寄せられる。
だが――
ドォン!!
天狗の周囲で風が爆発する。
猛烈な風圧が四方へ弾け、鎖が吹き飛ばされる。
迅も地面へ叩きつけられ、草原の土が舞い上がる。
ゆっくりと立ち上がる迅。
その視線の先で、天狗がさらに空へ上昇していた。
風が変わる。
今までとは明らかに違う。
空の雲が一方向へ引き寄せられ、
巨大な気流が天狗の手へ集まり始める。
天狗はゆっくり腕を振り上げる。
「遊びは終わりだ」
空が唸る。
「天断風」
次の瞬間、空が裂けた。
巨大な風の刃が一直線に草原を切り裂く。
地面が抉れ、岩が砕け、空気そのものが真っ二つに割れたかのような衝撃が走る。
迅は瞬時に鎖を四方へ投げる。
岩、地面、倒木、崩れた岩壁、
鎖がすべてに絡みつく。
迅はその鎖を同時に引く。
体が一瞬で横へ引き抜かれる。
だが風の刃は止まらない。
草原が一直線に削り取られる。
迅の腕をかすめる。
服が裂け、血が散る。
しかし迅は止まらない。
鎖をさらに投げ、そして一気に引く。
その勢いで空中へ跳ぶ。
天狗の真正面へ。
迅の目が鋭く光る。
ジャララララッ――!
鎖が一斉に動く。
空中に張られていたすべての鎖が天狗へ向かって収束する。
逃げ場のない空、鉄の檻。
迅が低く呟く。
「終わりだ」
鎖が天狗へ迫る。
だが天狗は笑っていた。
「いい戦いだ!」
風はまだ唸るーー




