回復の光
断界戦線の本部――超近未来的な建造物の内部は、規則正しく光が走る廊下と機械の低音が響く空間だった。
蒼真は任務で受けた致命傷の後、病室のような特殊区画に運ばれる。
空気には回復の技能を行使する者だけが放つ、温かく落ち着いた気配が満ちていた。
「……ここが、あの回復の技能を使える方の部屋か」
蒼真は弱々しく目を開ける。
そこに現れたのは、小柄で腰の曲がったおばあちゃん。
白い髪を後ろで束ね、手には細い杖を持っていた。
「ふむ、致命傷ねぇ……まあ、若者にゃ少し強すぎたかのう」
おばあちゃんはにっこり笑い、杖を空中で一振りすると、淡い光が蒼真の体を包み込む。
「……あったかい…」
蒼真の傷口から痛みが徐々に引き、血色も戻っていく。
体中に光が巡る感覚があり、まるで自分の力が再び満ちていくようだった。
「回復の技能は、死ぬ以外ならだいたいなんでも直すのじゃよ」
おばあちゃんは杖を揺らしながら言った。
「……死ぬかどうかは本人の意識次第じゃから、気を抜くでないぞ」
蒼真は息を整えながら頭を上げる。
「……ありがとうございます。ここまで助かるとは思わなかった」
おばあちゃんは目を細め、にっこり笑った。
「よしよし、まだまだこれからじゃ。戦いは続くぞ、若者よ」
その時、灯真が部屋に入ってきた。
「蒼真、無事か?」
蒼真はかすかに頷く。
「……はい…」
灯真は少しだけ視線を伏せ、口元に小さな溜息をついた。
「……悪かった、蒼真。あんなに危険な戦いに巻き込んでしまって」
蒼真は驚いた顔で灯真を見るが、やがて微笑みを浮かべる。
「…謝らなくてもいいです。僕も戦えるように成長するためでしたから」
灯真は頷き、少しだけ目を細める。
「そうか…だが、もう少し考えて動くべきだったな。すまない」
その空気を破るように、おばあちゃんが杖を一振りして部屋のモニターを点灯させる。
「さて、若者たち。次の任務じゃ。今回のは超大型任務、ただの魔獣討伐ではないぞ」
モニターには、未知の巨大生物や広大な戦域の情報が映し出される。
「超大型…?」
蒼真は息を飲む。
灯真も画面を見つめ、少し笑みを浮かべる。
「面白くなりそうだな」
おばあちゃんは杖を軽く揺らす。
「若者よ、準備は整ったかのう? この任務は大仕事になる。君たちの力を試すには十分じゃ」
蒼真は刀を握り直し、深く息を吸う。
「……はい。行きましょう、灯真」
灯真も金棒を肩に担ぎ、静かに頷いた。
森の影が二人を待っている――超大型任務が、今、始まろうとしていた。




