迫る牙
荒れた山道を、蒼真たちは進んでいた。
周囲には木々が生い茂り、風が静かに枝を揺らしている。
玲司が前を歩きながら言った。
「この辺りで魔獣の反応が出てる」
悠雅が辺りを見渡す。
「静かすぎるな」
響は足を止め、地面に手をかざした。
「……いる」
次の瞬間――
茂みの奥から黒い影が飛び出した。
鋭い牙を持つ魔獣だった。
「来たぞ!」
玲司が叫ぶ。
魔獣が地面を蹴り、蒼真へと突進する。
しかし――
蒼真の姿が一瞬で消えた。
次の瞬間、魔獣の横へ回り込んでいる。
「速いな」
玲司が感心したように言う。
蒼真は刀を振る。
鋭い斬撃が魔獣を切り裂いた。
魔獣の体が崩れ始める。
黒い粒子となり、風に溶けるように消えていった。
だが――
響が鋭く言った。
「まだいる!」
次の瞬間、森の奥から複数の影が飛び出す。
三体の魔獣。
悠雅が前に出る。
「数が増えたな」
玲司が笑う。
「いいじゃん」
「新人の実戦練習にはちょうどいい」
蒼真は刀を構えた。
三体の魔獣が低く唸りながら、ゆっくりと距離を詰めてくる。
悠雅が前に出る。
「蒼真、左を頼む」
「了解!」
次の瞬間、悠雅が手をかざした。
空気が重く歪む。
「重圧領域」
魔獣の一体の動きが、突然鈍くなった。
「……重いだろ?」
悠雅が小さく呟く。
重力に押し潰されるように、魔獣の足が地面に沈む。
蒼真はその瞬間を逃さなかった。
地面を蹴る。
一瞬で距離を詰め、刀が閃いた。
鋭い一撃。
魔獣の体が斬り裂かれる。
黒い粒子となり、崩れ始めた。
玲司が軽く口笛を吹く。
「連携いいじゃん」
だがその時――
残りの二体が同時に動いた。
一体が蒼真へ飛びかかる。
もう一体は、響へ突進する。
蒼真は咄嗟に後ろへ跳ぶ。
魔獣の爪が地面を抉った。
その瞬間、響が前に出る。
「邪魔」
響が静かに手を前に出す。
その瞬間――
彼女の前の空間が歪んだ。
周囲の砂や小石が、吸い込まれるように集まり始める。
空気すら巻き込みながら、それらは一点に圧縮されていく。
やがて、拳ほどの黒い球体が生まれた。
響が腕を振る。
「轟咆」
次の瞬間――
その球体が弾丸のような速度で放たれた。
魔獣の体が宙に浮き、そのまま地面に叩きつけられる。
玲司が笑う。
「相変わらず派手だな」
響は淡々と言う。
「まだ終わってない」
最後の一体が、怒りの咆哮を上げた。
蒼真は刀を握り直す。
四人の戦いは、さらに激しくなろうとしていた。




