戦線の先輩たち
黒い粒子となって消えた魔獣を見て、蒼真はゆっくり刀を下ろした。
「……終わった」
訓練場の静寂が戻る。
悠雅が少し離れた場所から歩いてくる。
「相変わらず速いな」
蒼真は少し息を整えながら笑った。
「まだまだだよ」
迅は鎖を軽く揺らしながら言う。
「だが、確実に伸びている」
その時――
訓練場の入口から声が聞こえた。
「へぇ、新人か」
蒼真が振り向く。
そこには二人の人物が立っていた。
断界戦線のメンバーたちだ。
一人の男が腕を組みながら言う。
「噂は聞いてる」
「鬼の試験を突破したやつだろ」
蒼真は少し戸惑いながら頭を下げる。
「天城蒼真です」
その男はニヤッと笑う。
「そういえば自己紹介してなかったな」
男は軽く肩を回しながら言った。
「俺は空城玲司。空間の技能を使う」
その横に立っていた女性が、腕を組みながら口を開く。
「私は轟崎響」
「波動の技能よ」
蒼真は少し驚きながら二人を見る。
玲司は面白そうに笑う。
「新人にしては悪くない動きだったな」
響は蒼真をじっと見て言った。
「……確かに」
「速さは本物みたいね」
蒼真は少し照れたように頭をかいた。
「まだまだです。迅さんに鍛えてもらってるだけで」
玲司がくすっと笑う。
「いや、それだけであそこまで動けるやつはなかなかいないぞ」
悠雅が横から口を挟む。
「だろ?こいつ、最初会った時から速かったんだよ」
響は蒼真をじっと見つめたまま言う。
「速さは武器になる。でも、それだけじゃ通用しない」
蒼真は真剣な表情で頷いた。
「……はい」
迅が鎖を揺らしながら言った。
「そのためにここに来たんだ」
「これから嫌でも強くなる」
迅の言葉は静かだった。
だが蒼真には、それがこれから始まる戦いの重さを示しているように感じられた。




