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ソルの買い取ったガラス工房は少しずつではあるが軌道に乗りつつあるようだった。
問題も起きてはいるみたいだがガラス工房に所属する従業員たちとあーだこーだと頭を悩ませながら頑張って立ち向かっている。
「問題がようやくひとつ片付いたと思ったら十は出てくるんだ。たまんないよ」
と言いながらも充実した顔をしているのが印象的だった。
私はというと、相変わらずだ。
婚活は全滅。
庶民の商家へ希望範囲を拡大しても家に旨みがないからと振られ、恥を忍んで貴族の後妻となる見合いをセッティングしてもらっても同じ年頃のものと結婚できないことを散々勘繰られた上に容姿も年齢も家のことも侮られて上手くいかなかった。
今更慌てて職業婦人としての道を模索してもいまだ女性の求人は倍率が高く、私では軒並み断られた。
「……………はあ」
今日の見合いも上手くいかず、私はベッドの上で不貞腐れていた。
「お嬢様、そんなに気を落とさないで。いつか必ずお嬢様の良さをわかってくれる殿方が現れますわ」
落ち込む私を世話係の侍女が励まそうとしてくれる。
「ほら、そんな風に不貞腐れていないで。今日、この後夜会じゃありませんか。新たな出会いがあるかもしれないのにそんな顔をしていたら誰も寄ってきてくれませんよ」
「………………そうね」
侍女の言葉に私は無理矢理に気力を振り絞り、ドレスを用意してくれている彼女の元へと向かう。
用意してあったドレスは大人の色をしたくすんだピンク。体のラインを強調するようなマーメイドラインで、装飾は控えめでシンプル。
身に纏えば大人の女性としての色気が滲むように作られた美しいドレスだ。
私は侍女に手伝ってもらいながらその本日の戦装束へと着替えて、ドレスに合うようにメイクを施してもらった。
鏡の中の自分の顔は美しく仕上がっていたが、抜きん出るほど美しいかと問われれば疑問しかない。
おそらくまた大衆に埋没して誰にも見向きされないのだろうなと思うとため息しか出なかった。
「装飾はどうなさいますか?」
侍女が私の宝飾品を並べて見せてくる。
その中に目を引く大振りの真っ青なブローチを見つけて、眉が寄りそうになった。
もちろんソルがプレゼントしてくれたあのブローチだ。
今の気分では見たくないものだった。
「……………任せるわ」
「かしこまりました」
目を背け、私がそう告げれば侍女は頷く。
そうした彼女が何を手に取るかはわかっていたけれど、それは嫌だとは言えなかった。
わかっているからだ。そのブローチの美しさは、目が覚めるような青色は目を引くことができるのだ。
それこそ私に必要な宝飾品なのだと。
だから私は自分の内側に溢れそうになる負の感情を抑えて、侍女にされるがままブローチを身につける。
ーーひどいものだ。いつから私は人の成功を妬むような人間に成り下がったのだろう。
「お嬢様、いかがでしょうか?」
侍女が鏡を差し出して私を映し出す。
鏡の中にはいつもの私より確かに美しくなっているのに、まるで人形のように無の表情を浮かべていた。




