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 ソフィア様に連れられてやってきたのは繁華街だった。


 たくさんの人で賑わう雑踏に少しだけクラクラしそうだ。


 何せ、ソフィア様の護衛は今私ひとり。

 黙って城を抜け出す彼女は実に手慣れていて、止める暇さえなかった。

 きっと過去にも何度もそういうことをしたのだろう。


「ソフィア様……」

「今はソフィーよ。様はいらない。私たちは今、姉妹のように仲良くしている親友同士、街に遊びにきている低位貴族令嬢なのよ」

「そんな無茶な」

「あら、無茶ではないわ。昔ソルとはよくこうやって抜け出して遊んでたんだから」


 彼女の言葉に眉が寄る。

 つまり彼女のこの悪い遊びはソルが教えたものなのか、と呆れてしまう。


「さ、カノン、行きましょう。今日はね、お揃いのアクセサリーを見ましょうね」

「………ハイ」


 私の腕に恋人のように腕を絡めるソフィア様に私はただ頷くしかできなかった。

 ニコニコと笑むソフィア様は実に楽しそうだ。

 その顔を見ていたら「まあ、いっか」としがらみ等はどうでもよくなって、私も彼女とのお出かけを楽しもうと思えた。


「カノンはソルと遊びには行ったことはあるのよね?」

「ええ、何度か」

「そう。彼とのデートは楽しい? 彼ってば定番の場所から思いがけないところまで色んなところに連れて行ってくれるでしょう?」

「ええ、そうですね。さすが百戦錬磨の女たらしだなぁと思う時はあります」

「ふふふ、そう。あなたはそう思うのね。ねえ、カノン、あなたはソルを好きになったりしないの?」

「え?」


 思いがけない問いに私は目を丸くする。

 ソフィア様は大きな目をキラキラと輝かせて私のことをじっと見上げていた。


「大抵の女の子はソルとデートすると必ず彼を好きになるのよ。あなたはどう? ソルをどう思ってるの?」


 急にそう問われて、私は困る。


 ソルのことをどう思っているのか。

 初めは厄介な人に絡まれたと思っていたが、何度か接するうちに彼のことを軽薄だけど好ましいところもあると思うようになった。

 今では私のことを心配してくれるほどに思ってくれる大切な友人だ。


 けれどもソフィア様が聞きたいことはそういう感情の類ではないだろう。


「…………好きかどうかはともかく、好きになったら酷い目に遭いそうなので、好きにならないようにしている節はあります」

「まあ、ソルってば信用がないのね。あれだけ派手に遊べば当然でしょうけど」

「友人としては好きですよ」

「ふふ、そうね。アタクシもそうよ」


 私の言葉にソフィア様も同意してにっこりと笑う。

 と、ここでソフィア様がふと足を止める。


「あ、待って。見て、カノン。このお店、素敵だわ」


 そうしてソフィア様が指し示したのは繁華街で店を広げている露店だった。

 並んでいるのは木彫りの温かみのあるペンダントや、可愛らしいレースやリボン。手編みのミサンガ等の素朴なアクセサリーだ。


 キラキラしいソフィア様からは縁遠いように見えるものばかりで、私はついこう口を開いていた。


「少し意外ですね。ソフィアさ……ソフィーはこういうアクセサリーを好むようには見えなかったので」

「そうね、アタクシ、キラキラピカピカしたものを身につけるのは好きよ。でもね、こういう温かみのあるものも好きなの。今だってそういう格好でしょう?」


 そう言って私の目の前でくるりと回ったソフィア様は確かにキラキラの可憐なお姫様から一転してお忍びの貴族令嬢風で素朴なアクセサリーもよく似合いそうだった。

 私が納得すれば、彼女はニコニコと笑って露天を物色する。


「あら、ねえ、カノン。これはどうかしら?」


 ソフィア様が露天からアクセサリーを取り上げて自分に当てている。

 年頃の少女らしい様子に私もつい顔を綻ばせて「お似合いですよ」と微笑んだ。


 その後はもう普通の女子の買い物だ。

 いくつか“これ”と思うようなものを当てたり、相手に勧めてみたりと楽しく談笑をし合い、最後には互いに気に入ったものをいくつか見繕って買った。


「このリボンはジェリーへのお土産にしましょう」

「ジェリーですか?」

「お気に入りのテディベアなの。可愛いのよ、目がつぶらでクリクリしてて……今度カノンにも会わせてあげる」

「楽しみにしています」

「そしてこれはアタクシの素敵な友人に」


 そう言ってソフィア様が差し出してきたのは向日葵のような明るい黄色のリボンだった。

 日差しの下ではまるで黄金のように輝くサテン織のリボンを見て、私がきょとんと目を瞬かせればソフィア様は私の髪を一房取ってそこに差し出していたリボンを結びつける。


 突然の贈り物に私が戸惑っていれば、彼女は美しい顔で晴々しく笑った。

 さすがお姫様と言いたくなるほどに太陽のような明るさが惹きつける。


 彼女の笑顔から目が離せない私の肩をとん、と軽く叩いたソフィア様は笑顔のまま、こう続けた。


「次に出かける時はカノンがアタクシに似合うアクセサリーを見繕ってね」

「…………はい、精一杯勤めさせていただきます」

「やだ、固いわ。アタクシ、カノンとは主従関係を超えた仲になりたいの。そこはもっと砕けていいのよ」


 ソフィア様がそう言って笑う。

 だから私も自然と顔を綻ばせて微笑んだ。

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