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 豪華絢爛、煌びやかなダンスホール。

 色とりどりのドレスがふわりと舞い、さらなる華やかさで彩りを添えている。

 奥の一角では分厚いローストビーフを切り分ける料理人がおり、その周囲にも美味しそうな料理が立ち並んでいる。

 ドリンクを配るボーイたちはキビキビと動き超一流の仕事を見せつけ、選りすぐりの奏者は会場の空気に合わせて華やかで情熱的な、あるいは染みいるような落ち着きのあるダンスミュージックを奏で続けている。


 そんな最中、貴族の子息子女たちは思い思いに和やかに談笑やダンスを楽しんでいた。


 その会場の入り口に立った私。

 もう完全に気後れしていた。


 胸中を占めるのは“まさかこの場に戻ってくることになろうとは”だ。


 私こと、カノン・ヒューベルトにとって、これはただの夜会ではない。


 婚活市場とも呼ぶ、淑女の戦場。

 あらゆる手を尽くして殿方の情報を得て、ドレスとメイクという戦装束を纏い、己の将来を懸けて婚約者を掴み取る死に物狂いで挑む戦争。


 本来ならば二度と舞い戻ってくるつもりはなかったのだが、さる理由により私は新たな婚約者を見つけなければならなくなったのだ。


 二度と戻ってきたくなかったのに。

 二度と戻ってきたくなかったのに!


 そんなことを言ったってどうしようもないことはわかってはいるが、それでも胸中で思うくらいは許してほしい。


 私は二度と婚活という戦場に戻ってきたくなかったのに!


 とはいえ、ここで嘆いていても仕方ない。


 私は会場をぐるりと見渡して状況と頭に叩き込んできた紳士(えもの)たちの顔を見定める。


 足が震えそうになる。

 私は辺境にほど近い田舎育ちの子爵令嬢故に淑女としての自信はあまりなく、こういった交流会が不得手である自負がある。

 ましてや父の持つ領地にはめぼしいものやお金などはあるわけでなく、その上二度目の婚活となれば淑女としての市場価値はどうしても低くなる。


 だがここで手をこまねいていては己の将来が暗澹たるものとなるだけだ。


 いざ。いざ。いざ!


 私は自分を奮い立たせて、夜会(戦場)に思い切って足を踏み入れた。

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