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少年貴族に転生して、メイドと一緒にクルマ旅。~超快適ギフト「置き配」で旅から旅へのまったりスローライフを満喫します~  作者: 天宮暁


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第48話

 で、俺は気づけば白い空間にいた。

 オボロは至聖所と言ってたっけ。


「ひさしぶりですね、ノエル」


 と、手を振ってくれたのは青い髪の女神様だ。


「前にも言ったけど、そんなにひさしぶりでもないですよね」


「あなたがあまりメイドさんや婚約者さんといちゃいちゃしてるものですから、つい呼び出してしまいました」


 くすっと笑って言う女神様に、


「冗談はやめてくださいよ」


「冗談でもないのですけどね。まずは、今回の件、本当にありがとうございました。あなたは頼んだ以上のことをしてくれました。それと、ごめんなさい。私の見通しが甘くて、あなたの力に頼る形になってしまいました」


「女神様でもあそこまで見通してたわけじゃないんですね」


「それはそうです。神といってもしょせんはメタサイコロジーによって生み出された想像の産物にすぎないのですから」


 超古代文明は、メタサイコロジーによってイメージした通りのものを生み出す力を持っていた。

 その力を使って「僕が考えた最強の神様」を具現化したのが、女神様のような存在なんだろう。

 すごい存在ではあるんだろうが、あくまでも人が想像し得る範囲を超えられないということか。


「お姉様――エリーゼに地球の専門書をプレゼントするのはまずいですか?」


「好きにしてくれて構いませんよ。神が干渉するのはダメですが、人の子であるあなたのすることに縛りはありません」


「何か用があって呼んだんじゃ?」


「用がなくてはいけませんか?」


 ふふっ、と笑う女神様。


「女神様までからかわないでくださいよ」


「いえ、私もあなたと打ち解けたいのです。一緒にBANBTSUを開発した仲じゃないですか」


 さすがは女神というべきか、その笑みは反則級だった。


「用といえば、用はあります。私からも今回の件のお礼をさせてもらおうと思いまして」


「お礼? 配達クエストの報酬ならもらってましたよね?」


「それとは別です。これからあなたはこの星中を駆け回ることになると思います。でも、せっかくその土地土地(とちどち)で築いたつながりがそれっきりになるのは寂しいですよね?」


「それはそうだけど」


 旅の魅力は出会いと別れと言われることもあるが、別れなんてなくて済むならそのほうがいい。

 だけど、そんな都合のいいことができるのか?


「あなたのハイルークに、新しい機能を追加しました。戻ったらカーナビを確認してください。あなたがキャンプしたことのある地点に一瞬で移動できるようになっていますから」


「それって……ファストトラベルができるってこと!? めちゃくちゃ便利じゃないか!」


「ふふっ、喜んでくれて嬉しいです。星の海を渡って他の地殻に行くのは私としても賛成です。でも、急ぐことはありません。じっくり今の地殻でスローライフを堪能してからでもいいですよ」


「助かるよ、女神様」


 俺が言うと、なぜか女神様が不満そうな顔をした。


「それ、気になっていたんですよね」


「えっ、それって?」


「ノエルは私のことを女神様と呼んでいるでしょう? 私には名前があるのですから、ちゃんと名前で呼んでください」


「でも、畏れ多いっていうか……なんか生々しい感じがしないか?」


「それがいいのではないですか! ……じゃなかった、やはり、人を呼ぶなら名前で呼ぶのが筋ではないでしょうか?」


 何か本音が聞こえたような気がするが、夢の中だからか、勘違いのような気もするな。


「じゃあ……エルフィアナ様?」


「はうっ……! いいです! でもまだ他人行儀です! もう一声、もう一声いけませんか!?」


「え、エルフィアナ……?」


「親愛を込めて、エルフィやフィアナでもいいのですよ? もっとズバッと思い切りよく呼び捨てにしてください!」


「いや、ちょっ、待ってくださいよ。今日はずいぶんぐいぐい来るじゃないですか」


「だ、だって……ノエルはいつもあのメイドさんと一緒だし。最近は婚約者さんとも親密になって……。私だけが天界から見守ってるんですよ!? チャンスは逃さず生かさないと!」


「わ、わかった。わかったから……」


 ずいっと迫ってくる女神様から身を離し、俺はこほんと咳払い。


「エルフィ」


「はぁうっ! 素晴らしいです! これからはずっとそう呼んでくださいね? 一晩眠ったら関係値リセットとかなしですよ?」


「そんなことしませんから、離れてくださいよ。……あ、なんか意識がぼんやりしてきた」


「もう時間切れですか!? ノエルのおかげで信仰者が増えて少しは神力が増してるのに……」


 女神様――エルフィのそんな言葉を最後に、俺の意識は薄らいでいくのだった。







 翌朝起きると、俺はテントの中のシュラフにいた。

 寝落ちした俺をエリーゼかリーシュカが運んでくれたんだろうな。


「夢を見た気がするな……」


 どういう経緯だったか忘れたけど、女神様のことをエルフィと呼ぶことに決まったらしい。


 もうひとつ、ハイルークのカーナビにファストトラベル機能が追加されたんだったな。


「エルフィ……ね。なんか恥ずかしいな」


 前世でBANBTSUの開発をしてたとき、メールやチャット越しにやりとりしていた依頼主のことが、正直言うとちょっと気になってはいたんだ。

 若い女性であることはまちがいなくて、開発を通じて信頼関係を築けた感触もあった。

 個人的な友情もあったと思う。


 でもそれだけに、出会い目的のような言動は慎むべきだと思ったんだよな。

 仕事で知り合った男性からいきなり口説かれたら、女性としては迷惑だろうし、今の時代ならセクハラだ。


 そんな密かに憧れていた女性と、転生者と神様という奇妙な縁ができた。

 エルフィなんて名前で呼んでしまったら、その名前に新しい感情が宿りかねない。


 俺にはエリーゼという婚約者がいる。

 でも、その婚約もどうなるかわからないんだったな。


 リーシュカだって、俺と二人で旅をすることを本当に喜んでくれている。


 それぞれの気持ちに向き合っていなかきゃいけないけど、俺は見た目にはまだ十歳で。

 中身は四十四かもしれないが、前世で人から好意を寄せられたことなんてほとんどなくて。

 そもそもみんなの寄せてくれている好意は、かわいい少年に対するものなのか、それとも俺を男性と意識してのものなのか。


 前世でもっとコミュ力や人間力を磨いておくんだった、と今さら思っても遅いよな。


「ああもう、僕はスローライフがしたかっただけなのに」


 そうつぶやきながらも、そんなに悪い気がしないことは、ひっそり認めるしかなさそうだ。

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