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少年貴族に転生して、メイドと一緒にクルマ旅。~超快適ギフト「置き配」で旅から旅へのまったりスローライフを満喫します~  作者: 天宮暁


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第47話

「ところで、ノエル。あなたの実家のことなのですけれど」


 俺の話が落ち着いたところで、エリーゼがそう切り出した。


「デンペロン侯爵家は大揉めのようですわ。跡取り候補として一歩先んじていたニコルがあなたに捕まり、大騒ぎです。デンペロン侯爵は身代金など払う必要はないと公爵家の使者を追い返してしまいました。公爵家としては身代金を要求するつもりはなく、ただ厳正に処罰してほしいと要求したにすぎないのですが」


「たぶん、罪を公正に罰するっていう発想がないんだろうね。そんなことを言ってくるのは身代金が目当てなんだろうと決めつけてる」


 いわゆる下衆の勘繰りというやつだ。


「……そのようですわね。ニコルが面目を失ったことで、ミゲルはいっそう増長し、街中ではミゲルへの反感が高まっているそうですわ」


 エリーゼの話を聞きながら、俺はロスベリア公爵家の情報網に改めて舌を巻く。

 ロスベリア公爵領からデンペロン侯爵領へは山を超えて数日という距離がある。

 それなのにこんなにも詳細に街の様子まで把握してるとは。


「さすがは王の耳とも言われるロスベリア公爵家だね」


「もしお望みでしたら、あなたを追放したお父上やミゲルを破滅させることもできますわよ? 私、あなたの受けた仕打ちをいまだに許せておりませんの」


 そう言って冷ややかに笑うエリーゼは、正直言って怖かった。


 俺は少し考えてから、


「やめておこう」


 俺は肩をすくめた。


「許す必要はないけど、恨み続けるのも馬鹿らしいよ。僕のスローライフを邪魔しない限りどうでもいいかな」


「そう、ですか。やはり私のノエルは器が大きくて素敵ですわね」


「他人に必要以上の興味がないだけだよ。もちろん親しい人はべつだけど」


 前世では転生もののコンテンツにも触れてたけど、屈辱的な目にあったら絶対にざまぁしないといけない縛りがあるようで、ちょっとしんどいなと思ってたんだよな。


 デンペロン侯爵は他の貴族からも嫌われがちだし、粗暴なミゲルは放っておいても墓穴を掘りそうだ。

 それで破滅するかどうかまでは知らないが、正直言ってどうでもいい。


「僕は、僕自身の人生を楽しくすることに集中したい。僕だけでなく、僕の周囲にいる人たちも、だけど」


 月並みな言い方だけど、そうすることこそが最高の復讐だともいえそうだ。


「さすがですね、ノエル。……まあ、ノエルが許しても私は許さないですけれど」


 と、何か企んでる笑いでエリーゼがぼそっとつぶやいているが……聞かなかったことにしておこう。


「そうだ、ボードゲームをやりたいと思ってたんだ」


 俺は「収納」から事前に購入しておいたボードゲームを取り出した。

 カラフルなクルマに乗ってすごろくをして、人生のアガリを目指す定番のやつだ。

 ルーレットの出目次第の運ゲーだが、ボードゲームに馴染みのないみんなにはうってつけだろう。


 ルールをざっと説明すると、


「おもしろそうですね!」


 とリーシュカ。

 他のみんなも乗り気だ。

 オボロとトモエの手でもルーレットならなんとかなる。

 クルルにもルーレットを試してもらって、無事回せることが確認できた。


「何か賭けましょうか? 一位の者は最下位の者になんでもひとつ命令できる、というのはどうです?」


『ふむ、おもしろい』


 エリーゼの提案に悩む様子もなくオボロがうなずく。


「オボロ、自分が負けるはずないと思ってるでしょ」


 俺の言葉に、リーシュカが勢いよく手を挙げて、


「はいはい、ノエル様! それなら、私が勝ってオボロが負けたときには、オボロには一晩枕になってもらいます!」


『な、なんだと!?』


『ほう、おもしろいではないか。妾もなにか罰を考えておかねば』


「……なんでもって言っても、常識の範囲内で頼むよ?」


 一応釘を差しておくが……ちゃんと聞いてるんだろうな、おまえら。







 結論から言おう。人生すごろくはエリーゼの勝ち。


 最下位は――俺だった。


「うふふ……いい子でちゅね、ノ・エ・ル」


 ペアのキャンプチェアに座ったエリーゼの太ももの上に、俺は頭を置いて寝そべっている。

 いわゆる膝枕だ。


「あのさ、僕、精神年齢四十代かもって言ったよね?」


「見た目は十歳の美少年だからいいのですわ。十歳の美少年なのに中身は大人で、私のような小娘の膝に甘えてメロメロになっているというのもいいですわね」


「……お姉様って結構業の深い趣味してるよね」


「くうう! 私のノエル様なのに!」


 と、ゲームで惜しくも二位だったリーシュカが地団駄を踏んでいる。


「さ、おやすみなさい、ノエル。お姉ちゃんの膝の上で」


「悔しいけど、ほんとに眠いや」


 悲しいかな俺の今の身体は十歳だ。

 この時間に焚き火に当たりながら膝枕なんてされたら、そりゃすぐに眠くなる。


「あ、本当に眠そうです。かわいいなぁ」


 と、俺の頬をつんつんするリーシュカ。


「くそ……覚えてろよ」


 毒づきながら、俺は眠りに落ちていく。

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