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少年貴族に転生して、メイドと一緒にクルマ旅。~超快適ギフト「置き配」で旅から旅へのまったりスローライフを満喫します~  作者: 天宮暁


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第46話

 結局遊び疲れてしまったので、今日はそのまま湖畔で一泊することになった。


 日が沈んだ後の湖畔は静かだ。

 闇が迫ってくるような夜の森の中で、みんなで囲む焚き火はほっとする。


 焚き火台の周りには、俺、リーシュカ、エリーゼのキャンプチェア。

 オボロにはゴザ、トモエにはアウトドア用の折りたたみマットだ。


 俺はずっと先延ばしにしていた話を切り出すことにした。


「実は僕には、前世の記憶があるんだ。こことは別の世界で生きていた記憶が」


 意外にも、みんなはあまり驚かなかった。


「まあ、幼い頃からお世話してますから。ノエル様が知るはずのないことをたくさんご存知なのはおかしいと思ってました」

「そうですわね。これだけの見知らぬ品々を手に入れて、それを平然と使っているのですから、何かあると思うのが当然ですわ」

『我はあまり気にしておらなかったな。人の子は人の子であろう』

『妾は知り合って間もないからの。奇妙な童だとは思うていたが、まさか異世界の者だったとは』


 俺はみんなに問わず語りに前世のことを話した。


 まずはクルマのこと。

 高度な工業技術によって生み出された自動車が当たり前のように走っていた。

 いろんなクルマがあって、俺はずっとハイルークに乗って旅をしてみたかった。


「じゃあ、夢が叶ったんですね!」


「そうだね。自分で運転できなかったのは予想外だったけど、楽しい旅をさせてもらってるよ」


「あのドローンという飛行機械も、発展した工業技術の産物というわけですか」


 前から思ってたけど、エリーゼは地球の技術に興味があるみたいだな。


「簡単に再現することはできないと思うけど、きっといつかはこの世界でも作れるようになるよ」


「私が生きているうちに願いたいものですけれど」


「『置き配』で専門書を取り寄せることはできるよ。ただ、異世界の言語で書かれているから読みこなすのは難しいだろうけど」


「ぜひお願いしたいですわ。お金なら惜しみません」


 と、意気込むエリーゼ。


 俺としてはこの世界に地球の技術を持ち込むつもりはなかった。

 でも、すごいものを見せつけるだけ見せつけて、この世界の技術では百年経っても作れません、ではあんまりだもんな。


 女神様的にオーケーかどうかだけ確認できるといいんだけど。

 BANBTSUの注意文で地上の文明への悪影響を気にしていたし。


 エリーゼは、他にも地球のことを聞きたがったが、俺にも全部うまく説明できるわけじゃない。


 それに、本題はこれからだ。


「僕は前世では、三十四歳まで生きた。その記憶を引き継いでるから、精神だけなら僕は今四十四歳……なのかもしれない」


 実際には、赤ん坊のときはほとんど意識がなかったし、幼児の時の記憶もぼんやりしている。

 幼い身体に心が引きずられているという感じもある。

 前世で死なずに四十四まで生きていた場合とは、精神年齢は違うだろう。


「僕のことを気味が悪いと思っても無理はないと思うんだ。十歳の子どもだと思ってた相手が実は四十過ぎだとわかったら、やっぱり戸惑うのが自然だと思う」


 俺の言葉に、焚き火につかのまの沈黙が落ちる。


「なんだ、そんなことでしたかぁ」


 なぜかほっとした顔で、リーシュカが言った。


「そんなことって……」


「いや、だって、ノエル様って小さい頃からびっくりするほど利発でしたし。知り合った頃は私もちょっと気後れしてたんです。でも、ノエル様がいろいろ気を遣ってくださって、すぐに慣れてしまいました。だから、今さらですね」


「私もですわ」


 と、エリーゼ。


「婚約者として六つも歳下の男の子を紹介されたときには、デンペロン侯爵家はロスベリア公爵家のことを舐めているのかと思ったものでした。ですが、かの家の令息としては珍しく礼節をわきまえていて、まるで天使のような――こほん、とても心根の優しい子だということが、すぐにわかりました。実は歳上だったと言われても納得ですわね」


『我らは人の子の年齢に思い入れがない。若かろうと老いていようと、その者が善き意思を持っておるかおらぬかであろう。そしてノエルはまちがいなく善き意思の持ち主だ』


『じゃのう。元は異世界人であると言われれば納得じゃ。気持ちが悪いなどということはありえぬよ』


 オボロ、トモエもそう言ってくれる。


 つんつんと足をつつく感触に足元を見ると、クルルが、


「きゅるるっ!」


 と胸を張っている。


「『僕は最初から知っていたけどね』……かな」


 たしかに、クルルは女神様から紹介されたから、俺の素性を最初から知っていた。


「逆に、ノエル様が四十代と言われても、あまりしっくり来ないですよね? 落ち着いてるようでいて、結構子どもっぽいところもありますし」


「そうですわね。私から見るに、その話を聞かされてもなお、かわいい弟という感じですわ。お父様より歳上のようにはとても見えません」


 まあ、公爵と比べられるとそうかもしれない。

 地位は人を作るというが、四十そこそこにしてあの威厳と落ち着きだ。

 前世で俺が四十まで生きていたとしてもあんなイケオジにはなれなかったろう。

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