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少年貴族に転生して、メイドと一緒にクルマ旅。~超快適ギフト「置き配」で旅から旅へのまったりスローライフを満喫します~  作者: 天宮暁


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第43話

「わわわっ!」


「『整地』!」


 火口をスキージャンプで飛び越えたハイルーク。


 その着地点の地面を宙に伸ばして着地用のスロープを形成する。


 なんとかスロープに着地するが、スピードが落ちない。


「リーシュカ、正面に『水球』を!」


「なるほどです! 『水球』!」


 リーシュカが魔法を使い、ハイルークの正面に巨大な水の球を作り出す。


 ハイルークは水球に突っ込んで、水の抵抗で減速する。


 リーシュカがドリフトして車体を回転させ、クルマの頭を火口に向ける。


 その火口から、悪しき竜の腕が伸びてきた。


 いまだ縛められたままの竜の腕は届かないが、火口周りの地面が崩れる。


 その地面に、ドローンと浄化の指輪が転がっている。


このままでは火口に呑まれそうだ。


「行っきますよおおおおおっ!」


「ちょっ、おい、リーシュカ!」


 リーシュカがアクセルを踏み、クルマは崩れる地面に突っ込んでいく。


 その先は火口だ。


 火口では白い紐に縛られた竜がクルマを睨む。


 指輪に迫るクルマに、竜が片腕を伸ばしてくる。


「『整地』!」


 崩れる地面の一部を杭状に整形し、竜の腕を弾く俺。


「リーシュカさん、あの腕に水を!」


「『水球』!」


「――『氷の抱擁』!」


 俺が弾いた竜の腕に、リーシュカの水がまとわりつく。

その水をエリーゼがギフトで凍らせた。


『我の出番だな!』


 オボロがハイルークの荷台から飛び出した。


 崩れる地面を駆け降り、火口に落ちる直前だった浄化の指輪を牙でキャッチ。


 そのオボロに、


『こっちじゃ! 妾に任せよ!』


『フンッ!』


 オボロは頭を振って浄化の指輪をトモエに投げる。


 荷台から飛び出し口で指輪をキャッチしたトモエは、崩れる地面に爪を立て、火口の上の祭壇に向かう。


『で、この後どうするのだ?』


 火口に落ちながら訊くオボロに、リーシュカが答えた。


「考えてません!」


『おい!』


 オボロとリーシュカが愉快なやりとりをしてるあいだに、ハイルークは火口へ真っ逆さまだ。


 だが、俺には策がある。


 それは、


「――取り出す!」


 俺は「収納」からあるものを取り出した。


 地滑りの現場で大量に「収納」した、各辺七十センチ、重さ一トンの岩ブロックだ。


 所持しているすべての岩ブロックを、火口の奥へと放り込む。


 それを空中で「整地」して、水平方向に薄く伸ばしながら融合させる。

火口の途中に中蓋を作る要領だ。


 その中蓋の上に、ブロック化せずにしまっていた土砂を取り出す。


 火口はブロックで蓋をされ、その上に緩衝用の土砂が降り積もる。


 だが、これに突っ込んでも十分事故だ。


「リーシュカ!」


「全力で『海嘯』ですっ!」


 火口に、海が現れた。


 そう錯覚するほどの大水が現れ、火口を池に変えてしまう。


 リーシュカがニコルたちに使った「海嘯」は、対人用にだいぶ加減したものだ。


 これが、リーシュカの本当の全力。


 俺は無から土を作り出すことはできないが、リーシュカは虚空から水を生み出せる。

 土は組成が複雑だが、水は単純な分子だからだ。


 エアバッグならぬウォーターバッグ。


 ウォーターバッグからのサンドバッグ。


 水中の土砂に突っ込んだ衝撃で、ハイルークのエアバッグまでもが作動する。


 水と土砂とエアバッグのおかげで落下の衝撃はなんとかしのげた。


 しかし、まだこれで終わりじゃない。


 水没したハイルークはすぐに浸水が始まっている。


 リーシュカが手加減抜きで放った水が、蓋の上をプールに変えていた。


「『置き配』――ええと、これか! 今すぐ頼む、クルル!」


 クルルがぽん、と現れ、俺に配達品を渡してくれる。


 先端が尖ったハンマー――緊急脱出用ハンマー三つだ。


 俺はリーシュカ、エリーゼにハンマーを渡し、


「窓を割って!」


 俺は助手席の窓を割る動作を実演し、二人が頷くのを確認してから、窓を全力で叩き割る。


 こんなことをするのは初めてだが、なんとか割れた。


 リーシュカとエリーゼも成功したのを確認しつつ、俺は窓から外に出る。


「ぷはっ!」


 と、水に浮かんで上を見ると、火口の縁でトモエが前脚を振っていた。


 トモエは祭壇に浄化の指輪をはめこむことに成功したらしい。


 見れば、悪しき竜の身体に、祭壇から発生した白い紐が絡みついていくところだった。


 紐は蚕の繭のように悪しき竜をがんじがらめに絡め取る。


 あれが完全に封印された状態なのだとしたら、さっきまでのは本当に封印が解ける直前だったんだな。


 俺は顔に貼り付く濡れた前髪をかきあげながら、



「配達――完了!」



 とつぶやくのだった。

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