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少年貴族に転生して、メイドと一緒にクルマ旅。~超快適ギフト「置き配」で旅から旅へのまったりスローライフを満喫します~  作者: 天宮暁


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第41話

「おもしろいですね、これ!」


 と言って、ドローンのモニター付きコントローラーを握っているのはリーシュカだ。


「ソウデスネ」


 俺はその横でいじけている。


 ドローンの操縦は俺がやる予定だったんだが、実戦投入の前に練習飛行をしておこうということになった。

 いくら時間がないとはいえ失敗はできないからな。


 で、俺、リーシュカ、エリーゼの三人でドローンの操縦をやってみたところ――うまかったのだ、断然。リーシュカが。


 まあ、リーシュカはクルマの運転にも才能があったし、ドローンの操縦も同じ才能の範疇だったとしてもおかしくはない。


 コントローラーの小さなモニターでは全員で見られないので、映画鑑賞用のスクリーンを取り出し、プロジェクターでドローンの空撮映像を映写している。


 日中の屋外でのプロジェクターは映りが悪いが、悪しき竜の影響か、サンセレストの上空には黒くて厚い雲が垂れ込んでいて、この宿営地も昼すぎにしては薄暗い。

 雨を警戒してタープを張り、キャンプ用のイスやテーブルも取り出した。


 みんなでドローン映像の鑑賞会をしてるような格好だな。

 オボロとトモエに付けられていた公爵家の魔術師さんが目を白黒させている。


「これが空から見たサンセレストですか。このような時ですが、美しいですわね」


『そうだな。我も空から地上を見下ろすのはこれが初めてだ』


『妾は汚染される前の時代には空を飛んでいた。その頃を思い出すの』


 三者三様の感想だ。


 俺は前世の動画サイトでドローンの空撮映像はよく見てたから、そこまで新鮮な驚きはない。

 でも、厚く雲の垂れ込める頂上から麓のセレスローズの群生地までの鮮やかなグラデーションは、この世界ならではの光景だと思う。


 俺は電気ポットで沸かしたお湯を使って、コーヒーと紅茶を淹れていく。

 俺はブラックコーヒー、リーシュカはカフェオレ、エリーゼは紅茶だ。

 オボロは白湯が好きで、トモエはホットミルクを好む。

 公爵家の魔術師さんにはエリーゼと同じく紅茶を出した。


「あ、見えてきましたよぉ」


 リーシュカの言葉に、全員がスクリーンに注目する。


 サンセレストの頂上に遠くから慎重に近づくドローン。


 頂上付近には樹木はなく、火口の周りにドーナツ状の岩場がある。


 その岩場には、火口を取り巻くように、巨石を組んで作られた鳥居のようなものが四つある。

 イギリスのストーンヘンジみたいな感じだな。


 その鳥居のあいだの一箇所に、質素な祭壇のようなものがある。

 一枚岩が積まれてひな壇のようになった上に、彫刻の施された記念碑のようなものがある。


「あの記念碑みたいなのに近づいてくれるか?」


「了解です」


 ドローンが近づき、記念碑がアップになる。


 記念碑の真ん中にはくぼみがある。

 浄化の指輪がぴったりはまりそうなくぼみだ。

 周囲の彫刻もここに指輪をはめこめと言わんばかり。


 記念碑の手前には、お盆のようなもの。

 おそらくはお供え用のものだろうが、今は何も載っていない。


「女神様の霊具はそこに置くのがよさそうだね。もちろん、封印が強化されて安全になってから、ちゃんとした社を作りたいけど」


 公爵の話によれば、浄化の指輪が盗まれたことが百年前の危機の発端だったんだもんな。

 彫刻が、これだけ大事なものだから取るな、悪しき竜が復活するぞと絵柄で脅してるのに、盗む奴は盗むのだ。

 盗難対策を徹底してもらおう。


「ノエル様。今さらですけど、指輪や霊具って人の手で直接捧げなくていいんでしょうか?」


「特別な儀式が必要だとは聞いてないけど……」


「ロスベリア公爵家に伝わる文書では、祭壇に捧げるだけでよかったはずですわ」


 エリーゼがそう補足してくれる。

 霊具は俺が女神様から授かったものだが、このドローンも同じく女神様から授かったギフトで手に入れたものだ。

 ドローンで「配達」するのが不敬だとは言われないだろう。


「火口のほうも見てくれる?」


 俺のリクエストで、リーシュカがドローンを上昇させ、火口を斜め上から映し出す。


 火口の中では、漆黒と滅紫のツートンカラーのドラゴンが、白く輝く紐のようなものでがんじがらめにされていた。

 竜は赤く輝く目を憎悪にたぎらせ、白い紐をぎしぎしと揺さぶっている。


「おっかないね」

「怖いです」

「これが悪しき竜ですか」

『聞きしにまさる迫力だな』

『元は妾の一部であったが、悲しいかな今はこの有り様だ』


 と、みんなが竜に注目する中、俺は火口の奥に目を凝らす。


「この火口って、地殻の奥の悪しき魔法使いまで直通なのかな?」


『地中から溢れた魔力の流路であるから、そうであろう』


 とトモエ。


「噴火することってある?」


『噴火……? 火を噴くということかの? いや、魔力は地殻の罅や穴を伝って地上に溢れ出すものじゃ。泉が湧き出すようなものと思えばよい。その過程で属性を帯びることはままあるが』


 前世の地球の火山は、マグマが溜まることで噴火した。

 だが、この世界にマントルはなく、地中にマグマがあるかも怪しいものだ。

 火口の奥に煌めくものも、赤いマグマではなく、魔力の虹色の輝きのように見える。

 ジュナの近くの活火山は、このマナが火属性を帯びたものなんだろう。


「……なるほどね」


 とつぶやく俺。


「ノエル様。ドローンを戻していいですか?」


「ん、ああ、いいよ」


 リーシュカの操縦で、しばらくするとドローンが戻ってきた。


 ドローンのカメラに映る自分たちを見て、リーシュカとエリーゼがカメラに向かって手を振った。


「空撮っていうのもおもしろいね」


 これまで実用的なものばかり買ってきてしまったが、ドローンでの撮影はもちろん、カメラを買って写真を残すのもありだよな。

あけましておめでとうございます。

本年もお付き合いいただけましたら嬉しいです。

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