第39話
結局、土砂をすべて取り除くのに一晩かかった。
だが、さいわいにも、地滑り時に集落にいた人たちを全員救助することができた。
意識がなくて回復を待ってる人や、骨折など大怪我をした人たちはいたが、死亡者がいなかったのは奇跡だろう。
俺が運んだ公爵家の救援物資も配られた。
俺からも追加で多人数用のテントを購入し、仮設住宅として提供した。
被災者たちもようやくひと心地つけた状況らしい。
疲れ果てた俺とリーシュカ、エリーゼは集落の近くにキャンプを張って、仮眠を取る。
夜が明けて、テントから出ると、そこには騎士のリーダーがいた。
「これは救世主殿。おはようございます」
「おはよう……って、救世主はよしてよ」
「何をおっしゃいます。あなたがいなければあの集落の者たちはみな命を落としていたでしょう。あなたはまぎれもなくあの集落の救世主です」
「そうだ、訊きたいことがあったんだった」
俺は話を逸らしがてら、騎士のリーダーに訊いてみる。
「このあたりの山の中に、神様の古い社があるはずなんだけど、誰か知ってる人はいないかな?」
「それでしたら私が知っています。私はこの集落の出身で、子どもの頃は山に分け入って遊んでいたのです」
お、いきなり当たりを引いたか。
まあ、情報がなくても公爵家の記録を参考に探せなくはないんだが。
しかし、騎士のリーダーは暗い顔になって、
「……ちょうどあのあたりでしたな」
「あのあたり……って、まさか!」
「ええ。地滑りが起きた山中に洞窟があり、その中に社のようなものがありました。ですので……」
「もう土砂の下、か」
弱ったな。
まさか社がなくなってしまうとは。
どうしたものか。
「置き配」でそれらしいものを買って、山の無事なところに新たに社を作るか?
前世の神道式の外宮でいいんだろうか?
「救世主殿はあの古い社に何か御用があったのですか?」
「ああ、社に神様の霊具を安置して祀りたかったんだ」
「お若いのに感心ですね。そういうことでしたら、私たちと村の者で新たな社を築きましょう」
「いいんですか?」
「さいわい、救世主殿の持ち込んでくださった物資には釘やかすがいなどの資材もありました。集落には腕の良い大工がいるので、頼めばすぐにでもやってくれますよ。まあ、俺の親父なんですが」
「そういうことならお願いしようかな。こんなときで申し訳ないけど、急ぎなんだ」
「大丈夫でしょう、元の社くらいの大きさなら、一日で作ってくれますよ」
というわけで、四つ目の社についても目処が立った。
ちなみに、後日談だが、エルカナトに作られたこの社は、増築を重ねて立派な教会になっていく。
集落の人たちは、救世主を遣わしてくださった愛と絆の神エルフィアナへの信仰に目覚め、教会を厚く尊崇した。
集落は、やがて近くに開通することになるロスベリア・スカイラインのパーキングエリアとして発展。
立ち寄る旅の人たちにエルフィアナの功徳を説く敬虔な村人たちの集落として有名になったという。
また、この世界の中では質のいいスコップや雨合羽、テントなどのアウトドア用品を作る工房ができ、隠れた名産品となったことも付記しておこう。




