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少年貴族に転生して、メイドと一緒にクルマ旅。~超快適ギフト「置き配」で旅から旅へのまったりスローライフを満喫します~  作者: 天宮暁


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第38話

「あれは……!」


 クルマの先、目指すエルカナト伯爵領の山を見て、エリーゼが息を呑んだ。


 山が、中腹から大きくえぐれていた。


「あそこが地滑りの現場か!」


「急ぎます!」


 領都ロスベリアから数時間ほどで、俺たちは地滑りの現場に着いていた。


「これは……」


「酷いです」


 崩壊した山から土砂がなだれ込み、集落があったとおぼしき一帯が土砂の下に埋もれている。


 悪いことに、地震の前後に雨が降ったのか、土砂の一部は泥濘化していた。


 駆けつけた周囲の住人や伯爵領の騎士が必死で土砂を取り除こうとしているが、さすがに量が多すぎる。


 エリーゼが騎士たちのリーダーに当たりをつけ、事情を訊く。


「ここには三十世帯くらいが暮らす小さな集落があったんです。そのすべてが生き埋めだ!」


 騎士たちのリーダーは目に涙すら浮かべて訴えた。


「お姉様、すぐに作業にかかるよ。それとこれを」


 俺は「置き配」で注文したスコップをリーダーに渡す。

 救助に当たっている人たちに行き渡るだけの数を用意した。


 あまり大盤振る舞いするとあとで持ち逃げされるのでは、と心配する向きもあるかもしれないが、問題ない。

「置き配」で購入した商品には盗難保証がついてるからな。

 俺の許可なく持ち去ろうとしたら神様に回収されて消えてしまう。


「こ、これはスコップか? すごい、なんて扱いやすく、頑丈そうなスコップなんだ!」


「俺はこっちから『整地』をかけていきますから、皆さんはあっちからお願いします」


「なっ、『整地』って、あんな魔法なんかで……」


「『整地』」


 説明してる時間が惜しい。

 俺は実際に「整地」で十メートル四方の土砂を一瞬で取り除く。

 取り除いた土砂はひとまず「収納」に入れておく。

「整地」だけだと、土を移動させたり押し固めたりするだけで、土砂を物理的になくすことはできないからな。


「こ、これが『整地』だと!?」


 リーダーが驚くのには理由がある。

 「整地」の魔法は地魔法の中では評価が低いのだ。

 本来の「整地」は攻撃用の魔法ではないし、防御に使うにも使い方が限定される。

 土木工事や工兵的な作業に使うには、起こせる現象の規模が小さすぎる。

 要は、それくらいなら人海戦術でやったほうが早くね? と言われがちな魔法なのだ。


 俺はさっそく作業に入るが……やってみてすぐに気がついた。


 土砂の量があまりに多い。


 さっきリーダーは三十世帯が暮らす集落と言っていた。

 しかし、必ずしも密集していたわけではないようで、ちょっとした大学のキャンパスくらいの広さはありそうだ。


 集落の地図でもあれば重点的に掘るべき場所がわかったんだろうが、救助に来た騎士たちの手元にそうしたものはないらしい。


 俺たちが到着したのが夕方の遅く。

 それから作業を始めて、すぐに日が暮れた。


 土と泥にまみれながら生存者を探す俺たちの頭上から、しとしとと雨まで降り出した。

「置き配」で調達した人数分の雨合羽を配り、再び「整地」に励む俺。

 なんて高機能な雨合羽なんだ!みたいなリアクションも今は聞いてる暇がない。


「『整地』――あっ!」


 何十度目かの「整地」をすると、「整地」跡に半壊した一軒家が現れた。


 すぐに騎士たちが一軒家に乗り込んで、中から住人たちを救助する。

 年若い夫婦と二人の子どもだ。


 救助に当たる人たちのあいだで歓声が上がった。


 俺は手を休めずに「整地」を続ける。

 他の人たちにはローテーションで休憩を取るようエリーゼ経由で申し入れたんだが、俺の代わりは存在しない。


 「整地」、「整地」、「整地」……


 いつもハイルークで走りながら「整地」している時は、走行に最低限必要な範囲に絞って「整地」している。

 そもそも、路面の状態が多少悪くても仮にも道だった場所なので、下に向かって押し固めるだけで大体は事足りる。


 だが、今は脳と魔力を振り絞って限界ギリギリの広さで「整地」し、取り除いた大量の土砂を「収納」へと放り込んでいる。


 これまでいろんな魔力鍛錬のアイデアを絞って、一人で、あるいはリーシュカと一緒にやってきた俺だが、ここまで負荷をかけて連続で魔法を行使するのは初めてだ。


 その後も、何軒か家を発見して、生存者を救助した。

 その救護は他の人に任せ、俺はやはり「整地」、「整地」、「整地」……


「ノエル様! 少しはお休みになってください!」


 ひしっと、俺の腰に抱きついて、リーシュカが言った。


「ダメだ!」


「どうしてですかぁ!」


「七十二時間の壁だ」


「七十……?」


「生き埋めになってから丸三日が経つと、生存率が極端に下がるんだ」


「三日なら、まだ余裕はあるはずです!」


「いや、大怪我をしたり、空気のないところに閉じ込められたりしてる人は、今この瞬間にも亡くなるかもしれないだろ。大丈夫、もう三分の一くらいは掘り出せた」


「ノエル様……」


 リーシュカは、手にしていたスコップを握り直す。

 リーシュカのメイド服も泥まみれだ。


「ここががんばりどころなんだ。それに、ちょっと掴めたこともある」


 俺は「整地」を使う。

 取り除いた土砂を空中で圧縮する。

 岩になった土砂を、さらに圧縮。

 最終的に残されたのは、各辺七十センチのキューブの岩だ。

 前世の箱庭クラフトゲーのブロックみたいだが、あれと違って一個あたりの重量は一トンもある。


「こうすれば『収納』の容量が節約できる」


 一トンの土砂をキューブに変えて「収納」する形なら、「収納」の処理がスムーズだ。

「収納」の中に直接一トンの土砂をぶちまけてしまうと、「収納」の処理が遅くなる。


「……ノエル様は、すごいお人です。まさか全力で救助に当たりながら魔法の改良までされていたなんて」


「心配してくれてありがとう、リーシュカ。でも、潰れるようなペースではやらないよ。僕の最終目標はスローライフなんだからね」

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