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少年貴族に転生して、メイドと一緒にクルマ旅。~超快適ギフト「置き配」で旅から旅へのまったりスローライフを満喫します~  作者: 天宮暁


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第26話

「まったくけしからん! 自分の子どもをなんだと思っておるのだ!」


 話を聞くなり激怒したのは、エリーゼの父親であるロスベリア公爵だ。


 公爵は四十前後だったと思う。

 前世の俺といくつも変わらない年齢のはずだが、前世の俺と違って、貴族家の当主らしい威厳と風格を備えている。

 ただ厳しいだけじゃなく、目元は優しげなのもポイントが高い。


 あの後、エリーゼの乗ってきた馬車とハイルークで山道を降り、半日ほど走って、ロスベリア公爵領領都ロスベリアにやってきた。


 ここに来るのは一年半ぶりだったか。

 エリーゼとの婚約のために来たのが最後だったな。


 ロスベリアはデンペロン侯爵領の領都デンペロンと比べてかなり広い。

 デンペロンのほうが背の高い建築物が密集していて、ロスベリアのほうが空間に余裕があるという感じだな。

 盆地を取り巻く山々を城壁とみなせるロスベリアは街を高い城壁で囲む必要がなく、デンペロンはその逆だ。

 必然的に、デンペロンは城壁に囲まれた限られた空間を有効活用すべく縦に伸び、ロスベリアは横に広がった。

 地理的にはデンペロンのほうが都会かもしれないが、広い穀倉地帯に支えられたロスベリアのほうが税収という面では豊かである。


 とまあ、そんなうんちくをリーシュカやオボロに語るうちに、俺たちを乗せた馬車はロスベリア公爵邸にやってきた。

 ちなみに、クルマはロスベリアに入る前に「収納」し、エリーゼの乗ってきた馬車に同乗させてもらっている。

 もちろん、オボロは狛犬形態だ。


 館に着くや否や、俺はエリーゼの両親に捕まった。


 食堂でお茶と軽食をいただきながらこれまでの流れを説明したところ、公爵から冒頭のせりふが出たというわけだ。


「あなた、落ち着いてください。ノエルが怯えてしまうわ」


 公爵夫人がそう言って夫をなだめる。

 夫人は三十代半ばくらいで、おっとりした雰囲気の美人さんだ。

 若い頃は周囲も羨む美男美女のカップルだったんだろうな。


「う、うむ。しかしだな、あまりにも無責任な話ではないか。ギフトの良し悪しで子どもを家から追い出すなど……」


 俺は肩をすくめて、


「中央の貴族のあいだで流行っているみたいです。祝福の儀でハズレを引いた子どもを家から追い出すことで、より神に愛される血筋を残すべきだ……という説が」


「それが無責任だと言っておるのだ。おおかた、相続争いをなくすための体の良い厄介払いであろうが」


「まあ、僕はもともと父とは折り合いが悪かったですからね」


 今世における俺の母は、父の後妻に当たる。

 だが、俺を産んだ後に亡くなってしまった。

 その後、父は離婚していた先妻と再婚した。

 兄二人はこの先妻の子だ。

 結局、この先妻と父の関係も再び冷え込み、現在は家庭内別居のような状態になっている。

 俺が転生者でなかったらグレててもおかしくないような家庭環境だ。


「ノエルよ。私たちはおまえのことを実の息子同然に思っている。もし行くあてがないのなら、我が家で養子として引き取ってもよい」


「私も同じ意見よ。というか、ノエル君はかわいいから引き取って育てたいというのが本音ね」


「公爵、公爵夫人……」


 不覚にも俺は涙ぐんでしまった。

 かわいそうだからといって他所の子どもを引き取って育てると言い切れる大人なんて、前世でもなかなかいなかっただろう。


 異を唱えたのは、意外にもエリーゼだった。


「待って! ノエルは私の婚約者よ! お父様の養子になってしまったら婚約はどうなってしまうの?」


「おまえもノエルのことを弟同然に思っていると言っていたではないか」


「弟同然に思っているのではなく、弟そのものだと思っているわ。そのうえで、男の子としてじっくり成熟させてから、私の生涯の伴侶として迎え入れる計画よ!」


「そ、そうか……」


 と、さすがにヒキ気味に公爵が言う。


 っていうか、そんな業の深い計画だったのかよ。


 気まずくなった空気を打ち破るべく、俺は別の話を持ち出した。


「公爵。ここへ来る途中でこのようなものを手に入れたのですが……」


 と言って取り出したのは、もちろん、デュラハンの残した浄化の指輪だ。


「これは……まさか浄化の指輪なのか!? ノエル、いったいどこでこれを?」


「この指輪をご存知なのですか?」


「詳しくは鑑定にかけてみなければわからぬが、公爵家の失われた家宝として伝わっているものにそっくりだ」


「失われた家宝……ですか?」


「うむ。少々長い話になるが、構わないかな?」


 と断る公爵に、うなずく俺。


「今から百年ほど前、我が領の北辺に鎮座する霊峰サンセレストに、悪しき竜が棲み着いた。竜の出現とともに我が領の北側を頻繁に天変地異が襲うようになった。当時のロスベリア公爵家には巫女姫と呼ばれた令嬢がいた。彼女に降った託宣を元に、彼女の恋人であった若き騎士が、悪しき竜を鎮められるという幻想遺物を探し求める旅に出た」


 そこで公爵は水をひと口。


「その幻想遺物というのが、この浄化の指輪なんですか?」


「うむ。巫女姫は託宣とともに浄化の指輪の絵を描き残していてな。その指輪は我が家に伝わる絵とそっくりだ」


「それで、その若き騎士は……?」


「わからぬのだ。任務を果たしたという『伝声』はあったらしいのだが、その後消息を絶ってしまった」


 デュラハンから指輪を受け取った時に見た幻視では、騎士は不慮の事故で無念の死を遂げていた。


「指輪も行方知れずとなっていた。悪しき竜は、甚大な被害をもたらした末に、当時の魔術師が百人がかりで封印したと伝わっている」


「なるほど……」


 それじゃ、あのデュラハンもさぞかし無念だったろうな。


「この指輪を公爵に届けるよう、ギフトを通して神から指示されています」


 「置き配」や配達クエストの話をしだすと大変なので、そんなふうにかいつまんで説明する。


「どうかお受け取りください」


「うむ。……おお、すさまじい聖気を感じるな。しかし、君が見つけたものだろう? 私が受け取ってしまっていいのかね?」


「実は、その騎士に託されたのです」


 俺は伝承の騎士とおぼしいデュラハンと遭遇したことを公爵に話す。


「騎士がそこまでして持ち帰ろうとしたものです。ロスベリア公爵家に蔵されるのが妥当かと」


「そういうことなら、有り難く受け取らせていただこう。このお礼はもちろんさせていただく」


 公爵の言葉と同時に、配達クエストのウインドウが視界に浮かび、スタンプが押された。


 これで500万もの配達ポイントがもらえたはずだ。

 このポイントを何に使うか、考えるだけでわくわくするな。

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