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少年貴族に転生して、メイドと一緒にクルマ旅。~超快適ギフト「置き配」で旅から旅へのまったりスローライフを満喫します~  作者: 天宮暁


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第18話

 先に峠の入口にたどり着いた俺たちは、クルマを路肩に止めて、デュラハンが追いついてくるのを待った。


「僕たちの勝ちでいいよね?」


 俺がデュラハンに声をかけると、デュラハンは会釈のようなしぐさをした。

 頭がないからわからないが、どうやらうなずいたらしい。


 デュラハンが俺に手を差し出す。


 握手……かと思ったが違った。


 デュラハンの手の上にあったのは、きれいな指輪だ。


 蒼い宝石の嵌まった、銀の指輪。

 宝石もリングも精緻な細工が施されている。


 ……いや、これは本当に人の手による細工だろうか?

 何かの特殊な力をそのまま凍てつかせたような不思議な形をしているな。


 その指輪の上に、半透明のウインドウがポップアップした。


「『浄化の指輪を届けよう!』か」


 配達クエストだ。


 配達先は、ロスベリア公爵エルロイドとなっている。


「報酬は……500万配達ポイント!?」


 俺はおもわず、差し出された指輪を受け取った。


 その瞬間、俺の視界に幻影が浮かぶ。


 走馬灯のように流れるその光景は、とある騎士の体験のようだ。


 平和な領地に突然現れた黒いドラゴン。

 早駆けで有名だった騎士は、ドラゴンの力を封じる指輪を取ってくるよう、姫のような女性から命じられた。

 指輪を手に入れることには成功したが、その帰り道、騎士は落石事故に遭って不慮の死を遂げてしまう。

 騎士は使命を果たせなかった無念でデュラハンとなった。

 そして、指輪を託すべく、自分より足の速い使者を探していた。

 もう間に合わないとは知らないままに――


「これがあなたなんだね」


 気づくと、デュラハンの身体が光に包まれていた。

 闇色の身体が白い粒子になって、天に向かって昇っていく。


「はわわ。行ってしまいましたねぇ」


「指輪を託して使命から解放されたんだろうね」


 俺とリーシュカはしばし、デュラハンの消えていった空を眺めていた。


 そんな俺とリーシュカに、声をかけるものがいた。


『礼を言うぞ、人間よ』


 ベテランの声優さんが演じてそうな渋い男性の声がいきなり聞こえた。


 声のした方を見ると、そこには大きな白い狼がいた。

 さっきまでは真っ黒でわからなかったが、白い体毛の一部を朱色の紐で束ねて房にしている。

 瞳は金色で、さっきまでとは違って、はっきりとした知性の光が宿っている。


「デュラハンに使役されていた狼? さっきまで黒くなかった?」


『これが我の本来の姿だ。あの忌々しい死霊めにいいように使われておったのだ』


 苦り切った口調で、狼が言った。


『助かったぞ、奇妙なモノに乗る人間よ。奴の無念を晴らしてくれたおかげで、私もようやく解放された』


 狼の言葉に、リーシュカが手を叩いて、


「それはよかったです! でも、どうしてデュラハンに捕まっていたんですかぁ?」


『我はこの一帯を守護する山の神なのだがな。大地から噴き出した穢れを浄化しきれず汚染されていたところを、折悪しく奴に目をつけられたのだ』


「弱り目に祟り目ってことか」


『どこの言葉か知らぬが、言い得て妙であるな。それより――』


 と、言葉を切って、自称山の神は鼻をすんすんと鳴らす。


『何やらうまそうな匂いがするな』


 と言って顔を向けたのは、ハイルークの座席のほうだ。


 俺は座席からポテトの入った紙袋を持ってくる。


「よかったら食べるか? ちょっと冷えちゃったかもだけど」


 食べやすいように紙袋を割いて広げ、山の神に差し出す俺。


『うむ、馳走に預かろう。む、これは!』


 がつがつと無言でポテトに食らいつく山の神。


『こんな旨いものは初めて食べたぞ! よし、決めた! 我はおぬしらについていく!』


「「えっ?」」


 と俺とリーシュカがおもわずハモる。


「山の神様なんでしょ? 山に戻らなくていいの?」


『今さら戻ったところで我が神域は消えておる。デュラハンごときに囚われた神など山の魍魎どもは敬うまい』


「いいのかな……」


 まあ、本人がいいと言うならいいんだろうけど。


「うーん。どうしようか」


 いきなりついてくると言われてもな。

 何かの役に立つわけでもないだろうし。


「でも、すっごいもふもふですよ? 寒い夜にクッション代わりにしたらよく眠れそうです」


「神様相手にすごいこと考えるね」


「せっかくついてきたいって言ってくれてるんです。お世話は私が見ますから、どうか飼わせてくれませんか?」


「大変かもしれないよ? 本当に世話を見きれるの?」


「できますもん!」


『おぬしら、我はペットではないのだぞ!?』


「ペットといえば、おまえのことはなんて呼べばいいの? 山の神じゃ呼びにくいんだけど」


『だからペットではないと言っておろうが! 元は月狼だったものが齢を重ねて守護者に変じたのが我だからな。とくにこれといった名前は決まっておらぬ。呼びにくければ好きに呼べ』


「ポチ」


『殺す』


「じ、冗談だよ。月から取ってオボロっていうのはどうだ?」


「わっ、素敵ですね! さすがはノエル様!」


『ほう、なかなか風雅な名前ではないか』


 満足そうに鼻を鳴らすと、オボロはハイルークの荷台に跳び乗った。


『さあ、先を急ぐのであろう? さっそく出発しようではないか!』


 なんかめっちゃ乗り気だな。


「さてはクルマが気になってしょうがなかったんだね?」


「さすがに疲れましたぁ。いったんそこの宿営地で朝ご飯にしましょうよぉ」


『む……そうだな。朝餉は特別にさっきのふらいどぽてとでよいぞ』


 とまあ、そんなわけで、旅に愉快な仲間が増えたのだった。

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